2011 Fiscal Year Research-status Report
分子遺伝疫学的解析による虚血性心疾患の病態解明と予防医学への応用に向けた研究
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23659339
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
松尾 洋孝 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 講師 (00528292)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | トランスポーター / トランスレーショナルリサーチ / 虚血性心疾患 / 分子機能 |
Research Abstract |
本研究では、分子遺伝疫学的解析による虚血性心疾患の病態を解明し、その予防医学への応用を目指すために、以下の(1)から(4)の観点から研究を実施している。( 1 ) 虚血性心疾患を対象とした臨床遺伝学的研究の基盤となる研究リソースの構築 ( 2 ) 痛風遺伝子ABCG2の病因変異(多型)と虚血性心疾患の関連解析 ( 3 ) 他の尿酸トランスポーター遺伝子を対象とした虚血性心疾患の関連解析 ( 4 )発症リスクと分子病態に基づく虚血性心疾患の予防法・治療法の開発に資する研究の展開初年度については、特に(1)の研究リソースの構築が進展し、予定数の虚血性心疾患のサンプルが得られつつあり、現在臨床情報の整理や追加サンプルの収集を実施中である。それらのサンプルに対して、現在、ABCG2における病因変異となる2つの主要なSNPについて解析中であり、2年度中に成果が十分に得られる状態である。他の尿酸トランスポーター遺伝子についても、これまでに候補が絞られてきている。これらとABCG2の解析結果と併せて評価していくことにより、(4)の目的達成は十分に可能な段階にある。また、虚血性心疾患を対象として解析している痛風遺伝子ABCG2についても、研究が進展して、高尿酸血症の発症機序に関する定説を覆すような新規メカニズムの解明につながる成果が得られた。すなわち、これまで尿酸排泄過剰によると考えられてきた高尿酸血症の多くは、実際には腎外排泄の低下(腸管からの尿酸排泄低下)が関わっていることが分かった。高尿酸血症と虚血性疾患を含む循環器疾患との関連は最近報告が認められるようになっており、ABCG2遺伝子がこれまで不明であった機序を介して、これらの循環器疾患に関連していることも考えられる重要な知見となった。(Ichida K, Matsuo H, et al. Nat Commun, in press.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
虚血性心疾患のサンプル収集と臨床データの収集は予定通りに進展している。また、解析対象としている痛風遺伝子ABCG2についても研究が進展して、これまでの通説を覆すような新規メカニズムの解明につながる成果が得られたことは、本研究においても、意義が大きいと考えられる。特に、虚血性心疾患と高尿酸血症との関連のメカニズムが、今回、申請者らが発見した高尿酸血症の新規メカニズム(Ichida K, Matsuo H, Takada T, et al. Nature Communications, in press.)による可能性もあり、今回発見された新規知見に基づいて、本研究の目的達成を目指せる体制が構築できている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
虚血性心疾患を含む循環器疾患のゲノムサンプルの収集をさらに充実させるとともに、臨床情報の収集に努める。すでに、収集されたサンプルについては、現在、痛風遺伝子ABCG2を対象とした遺伝子解析が進行中であり、これらの解析結果についても評価を進めていく。さらに、ABCG2以外の候補遺伝子の絞り込みを進めて、今後の虚血性疾患の解析に備えていく。また、高尿酸血症が虚血心疾患などの病態にどのように関わっているかという問題に関して、上記の知見を詳細に解析することで、問題の解決につながる研究成果が得られる可能性もあり、今後の研究を推進していく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題においては、特に遺伝子解析が重点項目であるため、研究費は主に遺伝子解析の試薬などの消耗品の購入に使用する。また、それらの成果発表のため、及び関連研究の進展度を把握するため、国内学会などの参加のための旅費も計上している。さらに、臨床データを扱うため、臨床データ解析のための雑役務費についても、「その他」の項目で計上している。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Decreased extra-renal urate excretion is a common cause of hyperuricemia.2012
Author(s)
K. Ichida, H. Matsuo, T. Takada, A. Nakayama, K. Murakami, T. Shimizu, Y. Yamanashi, H. Kasuga, H. Nakashima, T. Nakamura, Y. Takada, Y. Kawamura, H. Inoue, C. Okada, Y. Utsumi, et al.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 3
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] ABCG2 is a high-capacity urate transporter and its genetic impairment increases serum uric acid levels in humans.2011
Author(s)
A. Nakayama, H. Matsuo, T. Takada, K. Ichida, T. Nakamura, Y. Ikebuchi, K. Ito, T. Hosoya, Y. Kanai, H. Suzuki, N. Shinomiya
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Journal Title
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids
Volume: 30
Pages: 1091-1097
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Identification of ABCG2 dysfunction as a major factor contributing to gout.2011
Author(s)
H. Matsuo, T. Takada, K. Ichida, T. Nakamura, A. Nakayama, Y. Takada, C. Okada, Y. Sakurai, T. Hosoya, Y. Kanai, H. Suzuki, N. Shinomiya
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Journal Title
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids
Volume: 30
Pages: 1098-1104
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pathogenic GLUT9 mutations causing renal hypouricemia type 2 (RHUC2).2011
Author(s)
Y. Kawamura, H. Matsuo, T. Chiba, S. Nagamori, A. Nakayama, H. Inoue, Y. Utsumi, T. Oda, J. Nishiyama, Y. Kanai, N. Shinomiya
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Journal Title
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids
Volume: 30
Pages: 1105-1111
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Changes in uric acid levels with dysfunctional ABCG2 and novel pathophysiological model of hyperuricemia2012
Author(s)
Akiyoshi Nakayama, Hirotaka Matsuo, Kimiyoshi Ichida, Tappei Takada, Yuzo Takada, Hiroshi Nakashima, Takahiro Nakamura, Yutaka Sakurai, Nobuyuki Hamajima, Hiroshi Suzuki, Nariyoshi Shinomiya
Organizer
4th FEBS Special Meeting (ABC2012)
Place of Presentation
Innsbruck, Austria
Year and Date
2012.03.03 ~ 2012.03.09
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[Book] 細胞工学2012
Author(s)
松尾洋孝, 市田公美, 高田龍平, 中山昌喜, 四ノ宮成祥
Total Pages
(印刷中)
Publisher
秀潤社