2011 Fiscal Year Research-status Report
疾患由来の代謝異常がメチル水銀の毒性発現に及ぼす影響
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23659340
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
山元 恵 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (70344421)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メチル水銀 / 神経毒性 / 糖尿病マウス |
Research Abstract |
これまでメチル水銀の毒性学的研究に2型糖尿病マウス(KK-Ay)を用いた報告はないため、得られるデータは全て新規である。初めに、メチル水銀による神経症状、脳病変の出現条件の確認を目的として、4週齢(雄)のKK-Ayマウスとコントロールマウス(C57BL/6J)を用いて、メチル水銀の投与試験を行った。メチル水銀の曝露条件は、従来報告されているC57BL/6マウスを用いたメチル水銀の毒性発現に関する論文(飲水投与。脳病変有り)を元に、下記の通り、設定した (強制経口投与。1~2日おきに3回/週。2 mg Hg/kg BW、3 mg Hg/kg BW。8週間)。強制経口投与によるメチル水銀の投与は、飲水投与と比較して、正確な曝露量を把握できるという長所がある。その結果、いずれのメチル水銀曝露群においても、神経症状、脳病変は見られず、投与条件の新たな構築が必要であることが示唆された。その原因は、主として、メチル水銀の曝露形態の違いに由来する生体内動態の相違によるものと考えられた。そこで、KK-Ayマウスを用いて、より高濃度のメチル水銀の投与実験を行った。各濃度のメチル水銀、すなわち4 mg Hg/kg BW(約8週間)、5 mg Hg/kg BW(約6週間)、6 mg Hg/kg BW(約4週間)投与後、齧歯類におけるメチル水銀曝露に伴う神経症状の一つである後肢交叉、および脳病変(大脳、小脳)の出現(HE染色、Iba1:ミクログリアマーカー、GFAP:アストロサイトマーカーによる免疫組織学的手法を用いた検出)を確認することができた。現在、最終的に設定したメチル水銀の投与条件下(5 mg Hg/kg BW。約6週間)において、KK-AyとC57BL/6Jの比較実験の本試験を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでメチル水銀の毒性学的研究に用いられた報告のない糖尿病マウス(KK-Ay)を用いて、齧歯類におけるメチル水銀曝露に伴う神経症状の一つである後肢交叉、および脳病変の出現を確認することができた。現在、本試験中であり、得られた試料を適切に解析することにより、新規で重要な知見を発表できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本試験において得られたマウス試料の解析(水銀蓄積濃度の測定、病理、生化学的解析等)を進め、今年度中に学会発表、論文発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在進行中の本試験においては、予試験と比較して、多くの個体数のマウスが必要であり、解析(病理、生化学的解析等)に伴う予算も必要になるため、繰り越し分を充てる予定である。本試験の結果を論文として発表後、これまでに確立したプロトコールに沿って、研究計画に記載してある次の段階の実験(糖尿病の発症段階の異なるマウスにおける毒性発現の比較)を遂行する予定である。
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