2011 Fiscal Year Research-status Report
フィリピンにおけるヒトエンテロウイルスCの疫学解析とリスク評価
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23659343
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
押谷 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80419994)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エンテロウイルス / ポリオウイルス / ポリオ根絶計画 / ワクチン株由来ポリオウイルス / フィリピン |
Research Abstract |
ヒトエンテロウイルス(HEV)はその遺伝子配列の特徴からA~Dの4つの種(Species)に分けられている。このうちヒトエンテロウイルスC(HEV-C)は温帯地域ではほとんど見られず、熱帯地域に限局して見られている。世界保健機関(WHO)などはワクチンにより、小児麻痺の原因であるポリオウイルスの根絶を目指しており、多くの国でポリオウイルスをコントロールすることに成功している。ポリオ根絶計画の進展とともに新たな問題として注目されているのが、ワクチン株に由来するcVDPV(Circulating Vaccine Derived Poliotvirus)の問題である。ポリオウイルス同様に麻痺を起すcVDPVの多くが、ポリオワクチン株とHEV-Cとが遺伝子の組み換え(Recombination)を起こしたウイルスであることがわかっている。しかし、HEV-Cの熱帯地域における実態はよくわかっていない。 そこで我々はまずフィリピンで過去17年間にわたりポリオサーベイランスのために集められた麻痺患者の便検体からウイルスのタイピングを行った。これまでの方法では同定不能のなっていたウイルスについては遺伝子の解析により型を同定した。この結果、790例中108例がHEV-Cに分類されることがわかった。また、この中から検出されたCoxackie A20が、2001年にフィリピンで検出されたcVDPVの遺伝子の一部を構成していることが明らかになった。さらにマニラおよびマニラ近郊の農村部の河川水からエンテロウイルスの検出を試みた。エンテロウイルスであることが確定した47クローンのうち26クローンがHEV-Cであることが確認できた。これはHEV-Cがフィリピンにおいては広く伝播していることを示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
17年間のサーベイランスから得られた検体の解析を終了し、その結果を学術誌(Journal of Medical Virology)に投稿し受理された。また、これまでわからなかったフィリピンにおいて発生したcVDPVの原因ウイルスの起源を突き止めることができた。さらに、患者からだけでなく環境中(河川水)からも多くのHEV-Cを検出し、フィリピンでのHEV-Cの実態を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)cVDPVの一部を構成していることを突き止めたCoxackie A20ウイルスの解析をさらに進め、どのようなメカニズムで麻痺を起したウイルスが出現したのかを明らかにする。2)環境中(河川水)からの検出されたエンテロウイルス特にHEV-Cについても詳細な遺伝子解析を行い、フィリピンにおけるHEV-Cの疫学像とcVDPV出現の危険性についてのリスクアセスメントを行う。3)検体の採取を症状のない小児にまで広げ、フィリピンのコミュニティーでのHEV-Cの伝播状況を明らかにする。4)上記の少なくても1)2)について解析を完了させ論文投稿をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィリピンで検出されたウイルスの遺伝子解析用試薬(50万円)学会参加費用(国際学会:バンコク)(20万円)論文投稿料(30万円)外国旅費(フィリピンX1回)(20万円)雑費(20万円)
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Research Products
(3 results)