2012 Fiscal Year Research-status Report
中心血圧:動脈硬化性臓器障害の新たなリスク因子としての意義付け
Project/Area Number |
23659352
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田原 康玄 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00268749)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 哲郎 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00174003)
小原 克彦 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30260384)
|
Keywords | 中心血圧 / 血圧動揺性 / 循環器疾患 / 動脈硬化 / リスクマーカー |
Research Abstract |
中心血圧と心電図上のQT時間の延長は共に心血管系疾患のリスクとなる。QT時間の延長は圧波形の変化を介して中心血圧と関連する可能性があることから、本研究ではQT時間と中心血圧との関連を検討した。ながはまコホートサンプルでの解析から、QT時間の延長とQRS時間の短縮は、年齢や心拍数、脈波速度などの交絡因子とは独立して橈骨動脈圧波形および中心血圧と関連した。この結果は、抗加齢ドックサンプルでの検討でも再現された。心電図波形は中心血圧や血圧圧波形の独立した規定因子であり、中心血圧と予後との関連にも交絡しているかもしれない(Am J Hypertens. in press)。 中心血圧と喫煙との関連について検討した。喫煙者と非喫煙者とでは、上腕血圧は同等でも中心血圧は喫煙者の方が有意に高い可能性が指摘されている。一般地域住民を対象に、喫煙と橈骨動脈圧波形ならびに中心血圧との関連について検討した。ながはまコホートサンプルを用いた解析から、橈骨動脈圧波形から求めたAugmentation index(AIx)は喫煙者で高値であった。尿中コチニン量を喫煙強度の指標とした場合、喫煙強度に比例してAIxは増加した。非喫煙者のうち尿中コチニンが検出されたケースを受動喫煙と定義すると、受動喫煙者においてもAIxは有意に高値であった。多変量解析において、喫煙習慣および尿中コチニン量はAIxの独立した正の規定因子であった。以上の関連は上腕と中心との脈圧格差についても認められた。喫煙と喫煙強度は、喫煙者のみならず受動喫煙者においてもAIxおよび中心血圧の独立した因子であった。禁煙はもちろんのこと、受動喫煙の防止も循環器疾患の予防には重要であることを裏付ける成績といえる(Int J Cardiology. in press)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
愛媛大学病院の人間ドック(抗加齢ドック)受診者を対象としてデータの収集は、当初の予定通り実施し、サンプル数を拡大することができた。臨床検査についても予定通り実施した。具体的には、中心血圧は中心血圧計(HEM-9000AI)を用いて測定した。内蔵脂肪は臍部で計測したCT像から求めた。インスリン抵抗性は空腹時採血中のインスリン値から算出したHOMA指数で評価した。動脈硬化の指標として、頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)と脈波伝播速度(PWV)とを測定した。無症候性脳血管障害は頭部MRI画像から評価した。脳血管障害の評価は、無症候性ラクナ梗塞、側脳室白質病変、微小出血について行った。軽度認知機能障害はMCI screenを用いて評価した。 循環器疾患発症の追跡調査も当初の予定通り実施した。具体的には、人間ドック受診者に対してアンケートを送付し、疾患発症が疑われた例については医療機関の診療録から必要な情報を得た。なお、初回アンケートで回答がなかったケースについては、再度アンケートを送るとともに、電話での調査も平行して実施した。 滋賀県長浜市民を対象とした“ながはま0次コホート研究”のベースライン調査のデータも活用して検討を進めた。当該コホート研究では、約1万人を対象に中心血圧測定を行っており、多様な血液マーカーや臨床情報との関連解析が行える。当初の計画に比して、さらに研究対象の拡大に繋がった。 データ解析では、断面的な検討から中心血圧と喫煙、心電図(QT時間)との関連について前項に示すような結果を得た。 これらの実績は、当初の計画に照らして順調に推移していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
【臨床情報の収集】 初年度、次年度の計画を踏襲して継続的に更なるサンプル・臨床情報の収集を行い、解析規模の拡大を目指す。 【横断的な解析・検討】 当初の計画に従って横断的な解析を行う。研究代表者らが別途進める“ながはま0次コホート研究”のデータと対比させた検討も行い、独立した2集団で再現性を相互に検証することで、エビデンスの高い成果をえる。 【縦断的な解析・検討】 平成25年度も継続して心血管系疾患(脳卒中・心筋梗塞)の発症に関する追跡調査を行い、症例数が蓄積されれば縦断的な解析から心血管系イベントの発症に対する中心血圧の予後予測能について評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データを収集する上で必要な消耗品、血液検査委託費用、成果発表旅費としての使用を予定している。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Increased aortic wave reflection and smaller pulse pressure amplification in smokers and passive smokers confirmed by urinary cotinine levels: The Nagahama Study.2013
Author(s)
Tabara Y, Takahashi Y, Setoh K, Muro S, Kawaguchi T, Terao C, Kosugi S, Sekine A, Yamada R, Mishima M, Nakayama T, Matsuda F; on behalf of the Nagahama Study Group.
-
Journal Title
Int J Cardiol.
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Association of longer QT interval with arterial waveform and lower pulse pressure amplification: the Nagahama Study2013
Author(s)
Tabara Y, Takahashi Y, Kohara K, Setoh K, Kawaguchi T, Terao C, Igase M, Yamada R, Kosugi S, Sekine A, Miki T, Nakayama T, Matsuda F
-
Journal Title
Am J Hypertens
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed