2011 Fiscal Year Research-status Report
一般地域住民を含む糖尿病患者データベースにおけるうつ状態の検討
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23659353
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩瀬 正典 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00203381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 糖尿病 / うつ / 一般地域住民 / データベース / 糖尿病合併症 / 糖尿病神経障害 / 低血糖 / 身体活動量 |
Research Abstract |
本年度は糖尿病患者におけるうつ症状の頻度を一般地域住民と比較し、糖尿病患者のうつ症状と関連する因子について検討した。 福岡県糖尿病患者データベース研究に登録されている2型糖尿病患者4402人と福岡県久山町の正常耐糖能者1722人のうつ症状をCES-D(自記式アンケート)で調査した。うつ症状の頻度は正常者4.0%であったのに対して、糖尿病患者は8.9%で2倍以上の頻度を示した。さらに、年齢、性、生活習慣などを調整したロジスティック回帰分析を行うと、糖尿病のオッズ比は2.6となり、糖尿病患者では高頻度にうつ症状を合併していた。我が国における糖尿病患者のうつ症状の頻度を大規模な集団で今回初めて明らかにした。 さらに、抗うつ薬内服のない2型糖尿病患者4279人においてうつ症状と関連する因子を調べたところ、糖尿病性神経障害による両足のしびれがオッズ比2.2と最も関係が強かった。次に関連が強かったのが、他人の助けを要するような重症低血糖でオッズ比が1.9であった。低血糖が患者の心理面にも悪影響を与えていることが示唆された。さらに、女性のオッズ比は1.7、虚血性心臓病が1.6、糖尿病網膜症(光凝固)が1.6、脳血管障害が1.5、タバコが1.4であった。うつ症状の強さとの関連を検討すると、やはりうつ症状の程度が強い程、しびれ、重症低血糖、虚血性心臓病、網膜症の頻度が増加した。一方、うつ症状を減少させる有意な因子として、睡眠時間0.90、年齢0.96、身体活動量(運動)0.98が抽出された。うつ症状と肥満、血糖コントロールとの関係を検討すると、うつ症状を有する患者は、有意にBMI(肥満)やHbA1cが高値であった。糖尿病患者のうつ症状が血糖コントロールや合併症と強く関連していることが明らかになり、糖尿病とうつの相互関連の面から糖尿病患者の病態や治療を考慮する必要があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り一般地域住民と糖尿病患者よりなるデータベースが構築でき、うつ症状の頻度を両者で比較検討することができた。さらに、糖尿病患者における詳細な臨床情報おうつ症状との関係を解析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病患者におけるうつ症状が糖尿病患者の治療や予後に与える影響について検討する。今回、うつ症状が血糖不良、低血糖、肥満などと関連していたので、その成因や病態の解明とともに、糖尿病合併症の発症や生命予後に与える影響について前向き追跡調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
うつの合併はインスリン抵抗性や微小炎症をきたすことが報告されているので、保存されている血液検体を用いて、血中インスリン、アディポネクチン、高感度CRPを測定する。
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Research Products
(3 results)