2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659354
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山本 太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70304970)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 適応 / 進化 |
Research Abstract |
人類学的フィールド調査を通した研究によって、人々の暮らしやかつての日本及び西洋社会の生活様式に関する考察を行った。また、文献調査を通して社会の近代の過程を調査した。その上で、感染数理学的検証:数理モデルを用い、ウイルスが流行を維持できる水準の人口推定を行い、それを可能にした社会構造の再構築を行った。この検証は、感染症の流行を維持できるための最低限必要な人口規模を示唆するものとなった。 さらに、ウイルスとヒトとの関係を考察し、共生への道を模索した。結果、ウイルスとヒトの共生は、決して心地よいとはいえない妥協の産物として存在するとしても、その道を模索する意味と、その必要性を提言した。今後はさらにこの方向を進めて行きたい。また、歴史学、環境学の研究者と「感染症」「社会」「周縁と中心」といったテーマで対話を持つことができた。世界システムの中で感染症を見ていくという道の一端が見えてきた。 成果としては、『感染症と文明-共生への道』を上梓した。感染症が社会に大きな負のインパクトを与える一方で、文明の固有性を担保する要因として働いた点などを明らかにした。また、病原体の根絶は、行き過ぎた適応ではないかといった問題を提起し、むしろ大惨事を保全するためには、「共生」の考え方が必要になる点を強調した。しかし一方で、そのためには、「共生」のためのコストが必要になる。そのことが、次年度以降の研究課題の一つになると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界人口増加や都市化、グローバリゼーション、熱帯雨林の喪失やそれに伴う生態系の変化といった社会変化は、新たなウイルスがヒト社会に出現する機会を増大させている。しかし、ウイルスは、突然ヒト社会に出現し、流行を引き起こすわけではない。そこには、ウイルスとヒトの幾段階かに渡る適応過程が存在すると考える。その適応過程を考察し、最終的には「ヒトとウイルスの共生」のための端緒を得る研究はおおむね順調に進展している。 成果としては、『感染症と文明-共生への道』を上梓した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ウイルスのヒト社会への適応の研究を進化の過程から考察していきたい。その際には、背景としての社会状況を人類学や歴史学との連携から探るかたちの文理融合型研究を行って生きたい。 また、ウイルスの消滅に焦点を当て、そのメカニズムを解明しようとする試みとして、「エキリ」に焦点を当てた研究を考えている。 こうした研究を通して、「共生」という概念を土台にした21世紀の感染症対策を提言できればと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィールド調査を行う。平成24年度は、黒潮海流のなかにある八丈島とHTLV-1感染の集積が見られる北海道での調査を予定している。 また、平成24年度は、歴史学、環境学の研究者との対話を進めたい。感染症が社会の構造と密接に関係することから、社会の「周縁と中心」といったテーマをさらに掘り下げたい。上記研究を行うために、フィールド調査のための国内旅費を計上した。研究集会に関する経費を計上した。
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Research Products
(3 results)