2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23659354
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山本 太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70304970)
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Keywords | 疫学 / 感染症 / 地球システム / 開発途上国 / 生態地理学 / 数理シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では、ウイルス感染症の、宿主としてのヒト集団への適応過程を考察するための萌芽的研究を行った。近年の世界人口増加や都市化、グローバリゼーション、熱帯雨林の喪失やそれに伴う生態系破壊といった変化は、新たなウイルス感染症がヒト社会に出現する機会を増大させてきた。しかし医療生態学的視点に立てば、ウイルス感染症は、長く人間社会の変化につれて、出現したり、社会から消えていったりした。そうした状況を、文献的に、あるは疫学的に、あるいは数理モデルを用いて検証してきた。数理モデルでは、農耕開始以前の狩猟採集集団における感染症流行のシミュレーションも行った。そうした研究の中で、長い時間軸の中における感染症とヒト社会に関する洞察を得ることができた。 その成果として、ヒトと感染症の共生について、「それがたとえ、妥協の産物であり、決して心地よいものでなかったとしても、共生と言う概念で、21世紀の感染症対策を考えてみる必要がある」という提言を行うことができた。しかし一方で、感染症の共生には、共生のコストとでも呼ぶべき、コストがあり、そうした問題の解決は、今後の公衆衛生上の大きな課題として残ることも明らかになった。 研究の具体的な成果は、数理モデルを使った感染症流行の予測と対策に関する論文と1冊の本に結実した。また、感染症だけでなく、ヒトと疾病(非感染症を含む)との関係を考察する糸口を得ることもできた。今後は、そうした研究を、先進国、開発途上国共通の健康課題として考えていくような研究を考えている。
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Research Products
(9 results)