2011 Fiscal Year Research-status Report
ライフコースアプローチによる健康格差の世代間伝達に関する実証的研究
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23659356
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Research Institution | Ishikawa Prefectural Nursing University |
Principal Investigator |
大木 秀一 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (00303404)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ライフコース疫学 / リスク因子の連鎖・蓄積 / 臨界期 / 遺伝要因 / 生態学的モデル / 世代間伝達 / 健康格差 / 政策提言 |
Research Abstract |
生活習慣病のライフコース発症モデルを構築するために、広範な文献データベース、書籍情報を基に網羅的な情報収集を行い、所定の書式に従って内容を整理した(現在継続中)。対象疾患としては、今年度は単純性肥満を選択した(文献数約550編)。収集したリスク因子情報を、対象者の年齢、リスク因子を測定した年齢、観察期間、ライフイベント、臨界期、感受期、転換点、推移などの基本概念を基にライフコースに従って再配置した。さらに、リスク因子、予防因子、修飾因子、介在因子などの連鎖・蓄積の相互の関係を図示した。リスク因子の世代間伝達は家系データを利用し、形式遺伝学的分析、家族歴分析などの知見を用いて、ペアの血縁関係を明確にして分類した。複数の縦断的な調査研究の結果をつなげることで、仮想的なライフコース疾患リスクチャートを作成した。以上の結果を総合して、可視化し、リスク因子の影響の大きさまで含めて生活習慣病の世代間伝達・ライフコース疾患発症モデルを構築している。併せて次年度の分析に向けて、600家系以上の多胎児の母子健康手帳のデータを入力途中である。その意義は、従来は生物学、遺伝学、社会学、心理学、疫学など別々の領域で個別に検討されてきた成人期疾患発症リスク因子の、1.世代間伝達、2.ライフコースにおける蓄積と連鎖、3.修飾因子と介在因子、4.臨界期と感受期、などをFamily-basedライフコース疫学という枠組みで検証することにある。生活習慣病のリスク因子を生態学的モデルで、親世代からの流れに沿って、ミクロ(遺伝子、個人、家族)・マクロ(地域、社会)の両面から包括的に整理する。現世代での疾患リスクは、遺伝要因だけでなく社会・文化・経済的要因でも次世代へと受け継がれることを実証する意義がある。重要性としては、次世代における生活習慣病の発生予防に向けた公衆衛生学的な提言に結びつけることを可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.文献検討とその整理に関しては、対象疾患を絞ることにより妥当な分量で研究を実施した。2.データの入力に関しては、入力手順や必要項目の確認に時間をかけたため、開始時期が遅れ、年度内に入力が完了しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
生活習慣病に対する、世代間伝達、ライフコース疫学的解析を行う。胎内環境・新生児期の成長を反映する出生体重以外の代理変数を探索する。研究成果を総合的に検討し、親世代から児の胎児期・小児期・思春期・成人初期を通じての一貫した生活習慣病対策の実現に向けての公衆衛生学的な取り組みに対する提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた状況:アルバイトへのデータ入力依頼の時期が遅くなったため謝金の支払いがなかったこと。書籍(洋書)の購入で納品に時間がかかり、納期が年度を超えてしまうものがあったこと。2012年4月上旬にイタリアで開催された国際双生児研究会議(International Society for Twin Studies: ISTS)への参加旅費としたこと。次年度の使用計画:アルバイトによるデータの入力、統計解析プログラムの作成のための謝金。統計解析用の専門ソフトのリース料。国内外における学会発表、論文作成(英文校正料、論文掲載料など)の費用。
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Research Products
(4 results)