2011 Fiscal Year Research-status Report
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23659357
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大場 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60256477)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | メチル化DNA / カドミウム / エピジェネティクス |
Research Abstract |
生活・労働環境において,ヒトは様々な有害物質に曝される危険性がある。高濃度の場合は急性毒性を示し,低濃度の場合,症状は現れないが,遺伝子にダメージを与える物質であれば,何らか遺伝子レベルで変化を起こしている可能性がある。本研究は,低濃度の有害物質による健康への影響を評価する方法として,DNAの塩基配列の変異によらない遺伝情報(エピジェネティクス)の1つであるメチル化DNAの検出を行った。DNAのメチル化は,シトシン―グアニン(C G)配列のCにメチル基が付き,遺伝子の発現調節領域にある場合,その発現のON/OFFのスイッチとして働くことが知られている。がん細胞では,がん抑制遺伝子がDNAのメチル化により不活化される報告がある。従って,メチル化DNAを調べることは,化学物質による発がんや健康障害の評価に有用と考えられる。 初年度は有害物質として重金属のカドミウム(Cd)をラットに長期間曝露させ,散在性反復配列である ID elementsのメチル化を調べた。ラットは20 mg Cd /kg/day,週6日5週間及び10週間経口投与し,対象として同様に蒸留水を投与した。投与終了後,各臓器を摘出し,各臓器のゲノムDNAを抽出した。メチル化DNAの検出は,抽出したゲノムDNAを制限酵素(EcoRI)で消化し,更にメチル化されると消化できない制限酵素(HhaI:認識配列 GCGC)で消化を行い,リアルタイムPCR法でID elements(メチル化されたDNA)を増幅した。 肝臓由来のゲノムDNAは,Cd曝露によりメチル化DNAが増加し,投与期間が長くなるとそのメチル化の割合も増加する傾向を確認した。また,そのメチル化DNAは,肝臓中のCd濃度やCdによって誘導されるメタロチオネインとの相関も確認した。従って,Cdは,ラット肝臓のゲノムDNAのメチル化に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット肝臓から抽出したゲノムDNAを用いたメチル化DNAの検出はおおむね順調に進展しているが,血液から抽出したゲノムDNAを用いたメチル化DNAの検出は安定した結果が得られていないため,やや遅れている。肝臓由来のゲノムDNAでは検出できているため,血液から精製したDNAに問題がある可能性があると考え,血液からゲノムDNAを抽出する方法を再検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト血液から抽出したゲノムDNAを用いて,ヒト遺伝子の反復配列であるAlu とLINE-1 elementのメチル化DNAを検出し,メチル化DNAと重金属・骨密度等との関係を比較・検討する。 これまでに,健康診断においてインフォームドコンセントを行い,承諾を得た被験者の血液,骨密度の測定,血中金属濃度の測定,アンケート調査などを行っている。骨密度は,健診時にAOS-100(ALOKA製)を用いて,踵骨の音響的骨評価値(ostero sono-assessment index:OSI)を測定した。また,血液中の重金属(Cd,Pb,Agなど)濃度は原子吸光度法で測定した。 ヒトのゲノムDNAは承諾を得た被験者の血液から抽出する。メチル化DNAの検出は,ラットの実験と同様の方法で行い,調べる遺伝子は反復配列であるAlu とLINE-1 elementを調べる。実験から得られたDNAのメチル化状態,骨密度,重金属( Cd,Pb,Agなど)濃度をそれぞれ比較し,相関を示すかどうかを調べ,DNAのメチル化が健康影響の評価として有用性があるかどうかを検討する。 また,ラット血液から抽出したゲノムDNAのメチル化の検出が安定しないため,再検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度と同様の実験方法を用いるため,核酸抽出試薬,Real-time PCR用試薬類,器具(ピペット,チューブ・チップ等)が必要である。核酸抽出試薬は,被験者の血液からゲノムDNAを抽出するために必要である。Real-time PCR用試薬類は,抽出したDNAを制限酵素で消化し,その消化したDNAを鋳型としてPCRを行うために必要である。器具(ピペット,チューブ・チップ等)は核酸抽出やReal-time PCRを行うために必要である。 また,初年度の未使用研究費はラット血液のゲノムDNAのメチル化の検出に使用する。
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