2011 Fiscal Year Research-status Report
分子修飾β2ミクログロブリンの臨床疫学的意義の解明
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23659364
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
新開 省二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (60171063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 年総 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 教授 (80133635)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | β2ミクログロブリン / 分子修飾 / 臨床疫学的意義 / 高齢者 |
Research Abstract |
血清β2-microglobulin(β2-M)は高齢者のadverse health outcomeの新たな危険因子である(Shinkai et a. Arch Intern Med 2008; 168: 200-206)。その機序について申請者は「変性β2-M仮説」を提唱している。本研究は、高齢者の血清中にのみ検出された酸素添加β2-Mの臨床疫学的意義を解明することが最終目標である。それに向けて、1)血清中の分子修飾β2-Mの検出法を確立する、2)この方法を用いて、当研究所の長期縦断研究(TMIG-LISA)で保存(-80℃)している血清を用いて、追跡期間中に発生した3大死因群別死亡と分子修飾β2-Mとの関連性について、コホート内症例対照研究(nested case-control study)の手法で調べる計画であった。 分子修飾β2-Mの検出法は、高ヒトβ2-M抗体固定化ビーズの作成→抗体アフィニティによる血清中のβ2-Mの吸着濃縮→二次元電気泳動法によるβ2-Mの分離、比較→質量分析によるβ2-Mの構造解析、というものである。まず、この方法を用いて、性、年齢階級別の分子修飾β2-Mの出現頻度を調べるため、平成15年新潟県与板町で実施された基本健康診査を受診した年齢20~90歳の1,401人から層化無作為抽出された134人の検体からβ2-Mの精製を進めていった。30検体が終了した時点で(その間、精製物は冷凍保存)質量分析にかけたところ、スペクトラムのほとんどが年齢に関わらず一峰性であり、明瞭に二峰性を示すものはなかった。そこで、サンプルの採血後および精製後の保存条件による影響があるのではないかと考え、その検討を行っていたところ、質量分析法を分担していた戸田(プロテオーム研究の専門家)が大学に転出したため、次年度に研究体制を組み直し、残された課題に挑戦することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、血清中の分子修飾β2-Mの検出法を確立し、この方法を用いて分子修飾β2-Mの臨床疫学的意義を明らかにすることが目標である。しかし、昨年度、30検体のサンプルから抽出されたβ2-Mのスペクトラムは、ブロードではあるがほぼ全例が単峰であり、分子量の違いを示唆するデータは得られなかった。その前に行った実験では、高齢者の血清中にのみ、酸素添加β2-Mが検出されたのにである(上原記念生命科学財団研究報告集, 24, 2010)。そもそも分子修飾β2-Mは存在しないのか、あるいは測定条件の違いによるものであろうか。昨年度のサンプルは、採血後かなり時間が経って遠心分離して保存した血清であること、30検体から精製したのちしばらく冷凍保存したこと、など異なる測定条件が大きな影響を与えたのかもしれない。いずれにせよ、安定した測定法を確立することが最大の課題であり、それが成功しなければ臨床的意義の解明は進まない。
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Strategy for Future Research Activity |
血清中の分子修飾β2-Mの検出法は、これまで質量分析法を用いて酸素1分子が添加されたβ2-Mの有無とその血中濃度を調べてきたが、その他のアプローチもありそうである。たとえば、透析性アミロイド―シスの原因物質であるβ2-Mは重合体を形成している。一方、アミロイドーシス未発症者では重合はあまり進んでいない。重合を形成するかどうかは、血中β2-Mの濃度の高低に必ずしも依存していない。したがって重合体を形成するにはβ2-M分子が何らかの変成を受ける必要があると考えられ、そうした変成β2-Mの構造解析と測定法の開発が進んでいる。そこで、次年度は変成β2-Mの測定法の開発に取り組んでいる研究者と意見交換して、分子修飾β2-Mの測定法の確立に生かすとともに、変成β2-Mの測定が可能となった段階で測定を委託することを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費約230万の使途は、1/3が分子修飾β2-Mの測定法の確立に(試薬等の消耗品)、残りの2/3が本測定法あるいは変成β2-M測定法を用いたコホート内症例対照研究による臨床疫学的意義の解明(前者の場合は試薬等の消耗品、後者の場合は測定委託費)に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)