2011 Fiscal Year Research-status Report
核酸アダクトを指標とする飲酒に起因する健康被害の解析
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23659372
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
出屋敷 喜宏 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (00202193)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 核酸 / 代謝 / 社会医学 |
Research Abstract |
初年度となる平成23年度は、「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」の第一段階として「試験管内反応におけるRNAアダクト形成」について検討した。先ず、動物組織由来のポリヌクレオチドについて、生理的条件を模した緩和な条件下でアセトアルデヒドを反応させ、その付加体形成を検討した。アセトアルデヒド未処理のものと比較したところ、モノマーに分解したものについて従来の4種(A、G、C、U)のモノヌクレオチドの他にアダクトと想定されるモノヌクレオチドが含まれることが示唆された。この際、分析に十分な分離を得るためには、効果的な分離カラムの選択または分離条件の検討を要することが明らかとなり、条件の検討・比較を継続している。他方、アセトアルデヒド付加体を同定・定量するための標準品について、付加体が容易に生じると推定されたグアニン塩基に注目し、GMP、GTP等のアセトアルデヒド付加体の合成を行った。小スケールの実験において、考案した方法により収量に差はあるものの合成可能であることを確認した。しかし、標準品として精製する点に若干の問題があり、大量の標準品を効率よく合成・精製するための検討を要することが判明した。このような経緯から、標準品の合成・精製の検討と並行して、次年度に計画していた無細胞系発現実験に用いるためのアセトアルデヒド処理RNAポリヌクレオチド(付加体修飾RNA)の調製条件の検討を前倒しして開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」を目標として、今年度は「試験管内反応におけるRNAアダクト形成」について検討した。まず、ポリヌクレオチドに対するアセトアルデヒドの反応性を検討し、動物組織より抽出した総RNAにアセトアルデヒド付加体が形成されることを示唆する結果を得た。また、この試験管内反応で得られたポリヌクレオチドを分解して生じたモノマーの分析については、分離および定量に関して最適な分析条件を得るまでに至っていないので、分離カラム、展開溶液組成等の分析条件について引き続き検討を要する。他方、分析の標準品とするRNAアダクトについては、付加体が容易に生じると推定されたグアニン塩基に注目し、GMP、GTP等のアセトアルデヒド付加体の合成を検討した。小スケールの実験において、考案の合成方法により目的の化合物が合成できたと考えられた。合成化合物の構造確認および今後の研究推進のためには純化した所定の量が必要であり、精製方法を含めて効率的なスケールアップを検討している。次年度に計画していた無細胞系発現実験については、反応系に用いるためのアセトアルデヒド処理RNAポリヌクレオチド(付加体修飾RNA)の調製条件の検討を開始した。以上のように、分析対象とする動物組織由来総RNAのアセトアルデヒド付加体分析の条件検討はほぼ順調に進行しているものの、標準品の単離精製および構造確認が当初計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは、平成23年度に達成できなかった項目(標準品の単離精製および構造確認)に対処しつつ、LC/MS(/MS)を用いた分析条件を確立する。続いて、平成23年度に得られた結果に基づいて、「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」ならびに「RNAアダクト形成の翻訳過程に及ぼす影響の解析」を目標に、以下の項目を実施する。1)動物細胞の培養系におけるRNAアダクト形成の明示 動物細胞(HL-60あるいは血管内皮細胞等)の培養系にアセトアルデヒドを添加し、RNAアダクト(モノマーおよびポリマー)が生じることを示す(検出には本研究で確立するRNAアダクトの定量法を用いる)。細胞培養系へのアセトアルデヒド添加量に対する生成RNAアダクト量の変動およびアセトアルデヒド暴露時間に対する生成RNAアダクト量の経時的変動を検討する。2)無細胞発現系を用いる検討 特定のタンパク質(例えば、DNA修復酵素あるいはがん抑制タンパク質p53等)の一部をコードするmRNAをタンパク質の無細胞発現系用に調製し、アセトアルデヒド処理により得られるアダクト形成mRNAおよび未処理mRNAを用いて無細胞発現系で合成されたそれぞれの翻訳産物(タンパク質)を比較する。異常タンパク分子の生成は、生成タンパク質そのもの、あるいはそのタンパク分解酵素消化断片(ペプチド断片)の2次元電気泳動法あるいはLC/MS(/MS)により解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、平成23年度残額(約50,000円)と次年度交付予定額(直接経費 1,100,000円)を合わせた約1,150,000円が見込まれる。 「現在までの達成度」に記したように、計画した達成度が得られなかった研究項目が生じたため、あらかじめ準備を要する別項目「動物細胞の培養系におけるRNAアダクト形成」の検討を前倒しするため、次年度での購入を予定していた無細胞系発現実験に用いる機器(サーモミキサーコンフォート等)を平成23年度に購入した。したがって、次年度の予算は、そのほとんどを試薬・器具等の消耗品物品費に当てる予定である。消耗品に関する具体的な支出は、核酸関係の研究については、標準品合成用あるいは精製用試薬、HPLCおよびLC/MS/MS用のカラム、溶媒、サンプリング用器具等である。動物細胞を用いた研究に関しては、動物細胞、細胞培養用メディウム、サプリメント、培養容器、ディスポーザブルピペット等が必要となる。無細胞系発現実験に用いる試薬についても若干高額なものの購入が見込まれる。また、本研究の推進に必要な技術的指導を受けるため、出張(日程は日帰り。年間数回を予定。)のための交通費(旅費)を必要とする。学会発表については、別途自費で対応の予定である。その他、人件費については使用の予定はない。研究進捗が順調であれば、論文発表に係る校正費用ならびに投稿費用は本研究予算から支出したい。
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