2012 Fiscal Year Research-status Report
核酸アダクトを指標とする飲酒に起因する健康被害の解析
Project/Area Number |
23659372
|
Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
出屋敷 喜宏 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (00202193)
|
Keywords | 核酸 / 代謝 / 社会医学 |
Research Abstract |
平成23年度は、「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」の第一段階として「試験管内反応におけるRNAアダクト形成」について検討した。動物組織由来のポリヌクレオチドについて、生理的条件を模した緩和な条件下でアセトアルデヒドを反応させ、その付加体形成をアセトアルデヒド未処理のものと比較したところ、モノマーに分解したものについて従来の4種(A、G、C、U)のモノヌクレオチドの他にアダクトと想定されるモノヌクレオチドが含まれることが示唆された。他方、アセトアルデヒド付加体を同定・定量するための標準品について、付加体が容易に生じると推定されたグアニン塩基に注目し、GMP、GTP等のアセトアルデヒド付加体の合成を行い、小スケールの実験において、考案した方法により収量に差はあるものの合成可能であることを確認した。 平成24年度は、前年度に完結しなかった項目(標準品の単離精製および構造確認)に取り組み、研究に十分な純度の標準品を得るとともに、MS分析による構造確認も行った。研究項目「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」に関する実験においては、動物細胞(HL-60等)の培養系にアセトアルデヒドを添加し、RNAアダクト(ポリマーの分解産物由来)が生じることを示唆する結果を得た。また、細胞培養系へのアセトアルデヒド添加量に対する生成RNAアダクト量の変動およびアセトアルデヒド暴露時間に対する生成RNAアダクト量の経時的変動を検討するためには、更なる条件検討を要することが判明した。研究項目「RNAアダクト形成の翻訳過程に及ぼす影響の解析」に関する実験においては、特定タンパク質の一部をコードするmRNA(無細胞発現系を用いる検討に使用)を合成するためのコンストラクトを作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」を目標として、「試験管内反応におけるRNAアダクト形成」について検討した。ポリヌクレオチドに対するアセトアルデヒドの反応性を検討し、動物組織より抽出した総RNAにアセトアルデヒド付加体が形成されることを示唆する結果を得た。この試験管内反応で得られたポリヌクレオチドを分解して生じたモノマーの分析については、分離および定量に関して最適な分析条件を目指して、分離カラム、展開溶液組成等の検討を継続している。また、分析の標準品とするRNAアダクトについては、付加体が容易に生じると推定されたグアニン塩基に注目し、GMP、GTP等のアセトアルデヒド付加体の合成と純化を行い、その構造確認を行った。平成24年度は、研究項目「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」に関する実験においては、動物細胞(HL-60等)の培養系にアセトアルデヒドを添加し、RNAアダクト(ポリマーの分解産物由来)が生じることを示唆する結果を得た。しかしながら、細胞培養系へのアセトアルデヒド添加量に対する生成RNAアダクト量の変動およびアセトアルデヒド暴露時間に対する生成RNAアダクト量の経時的変動を検討するためには、更なる条件検討を要することが判明した。研究項目「RNAアダクト形成の翻訳過程に及ぼす影響の解析」に関する実験においては、特定タンパク質の一部をコードするmRNA(無細胞発現系を用いる検討に使用)を合成するためのコンストラクトを作製した。しかしながら、アダクト形成によるタンパク合成への影響について解析するまでの進捗が得られなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果に基づいて、「アセトアルデヒドに起因するRNAアダクト形成の明示」ならびに「RNAアダクト形成の翻訳過程に及ぼす影響の解析」を目標に、以下の項目を実施する。 1)動物細胞の培養系におけるRNAアダクト形成の明示: 平成24年度の研究において定量的結果を得るに至らなかったため、実験条件の改善を図り、細胞培養系へのアセトアルデヒド添加量に対する生成RNAアダクト量の変動およびアセトアルデヒド暴露時間に対する生成RNAアダクト量の経時的変動を解析する。 2)無細胞発現系を用いる検討: 作製したコンストラクトを用いて、特定タンパク質の一部をコードするmRNAをタンパク質の無細胞発現系用に調製し、アセトアルデヒド処理により得られるアダクト形成mRNAおよび未処理mRNAを用いて無細胞発現系で合成されたそれぞれの翻訳産物(タンパク質)を比較する。異常タンパク分子の生成は、生成タンパク質そのもの、あるいはそのタンパク分解酵素消化断片(ペプチド断片)の2次元電気泳動法あるいはLC/MS(/MS)により解析する。 3)培養動物細胞系を用いる検討: 特殊な株化動物細胞を使用して、薬剤による特定タンパク質の発現誘導が可能な細胞株をクローン化する。本細胞をアセトアルデヒド存在下に培養し、抽出核酸についてRNAアダクトおよびDNAアダクトの形成を確認するとともに、特定タンパク質の発現誘導の有無とそれぞれの場合に生合成されるタンパク質の異常の有無を2次元電気泳動法等により解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度までに、実験項目「動物細胞の培養系におけるRNAアダクト形成」で必要な無細胞系タンパク発現用機器(サーモミキサーコンフォート等)を購入したため、平成25年度の予算は、平成24年度の予算支出と同様に、そのほとんどを試薬・器具等の消耗品物品費に当てる予定である。消耗品に関する具体的な支出は、核酸関係の研究については、標準品合成用あるいは精製用試薬、HPLCおよびLC/MS/MS用のカラム、溶媒、サンプリング用器具等である。動物細胞を用いた研究に関しては、動物細胞、細胞培養用メディウム、サプリメント、培養容器、ディスポーザブルピペット等が必要となる。無細胞系発現実験に用いる試薬についても若干高額なものの購入が見込まれる。 また、本研究の推進に必要な技術的助言・指導を受けるため、出張(日程は日帰り。年間数回を予定。)のための交通費(旅費)を必要とする。学会発表については、研究進捗に合わせて1回または2回を予定している。「人件費・謝金」および「その他」の項目については、資料整理、論文発表に係る校正費用ならびに投稿費用等に支出したいと考えている。
|