2012 Fiscal Year Research-status Report
死体トレースデバイスの開発-データ取得過程の可視化を目指して-
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23659374
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
金武 潤 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (90326661)
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Keywords | 法医鑑定学 / 刑事証拠法 / 死体現象 / 死後経過時間 / 死体検案 |
Research Abstract |
食品流通分野で普及しているHACCP(Hazard Analysis Critical Control Point 「食品の危害分析・重要管理点方式」)の手法に着目し、実際の検視業務における死体の直腸温を連続的に測定し、高精度かつ信頼性の高い死後経過時間の推定方法の確立を目的とする。本研究課題では、データ取得過程の可視化という全く新しい観点から、死体の収容から返還までの過程を自動的に記録することを目指しており、刑事捜査の可視化を視野に置いている。 その前提条件として、直腸内に留置可能な連続モニタリングデバイスの開発が必要である。申請者の予備的な研究により、実務ではリアルタイムモニタリングが求められることが明らかになっており、これを実現するために、無線機能を導入した。計画では無線機能により容易にモニタリング可能であると考えたが、必要な機能を直腸内に留置可能という大きさの制約から、両方の性能を同時に実現することは難しく、試作機作製の段階に留まっている。一方、GPS(全地球測位システム)の導入については、デバイスの開発とは独立して行ったが、そのデータの有用性が示された。温度データ取得機能の完成後に統合化したデバイスとして開発を検討したい。 デバイス開発上の問題点はある程度具体化しており、今後は試作を繰り返してデバイスの完成を実現したい。また、操作ソフトウェアの開発も、現場係官が操作することを前提として、さらなる改良を加えたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
直腸温データをリアルタイムで取得するために無線機能を導入した。当初原因不明のノイズにより要求する性能が得られなかった。この点については、再設計・作製を行い、ノイズの軽減を達成した。また、測定データにばらつきがみられたが、内部での演算方法を改良し、平均化したデータが得られるようにした。さらに、電波の到達範囲が狭いという問題点については、外部アンテナを装着することにより改善を図ったが、実務上写真撮影等に影響を与えるという点で、内部アンテナのみで実現することが望ましい。デバイスの耐久性及び衛生上の観点から、外装ケースにポリカーボネートを採用したが、現時点では特に問題は生じていない。制御ソフトウェアについては、単純なグラフ表示機能までは実現している。実務での応用には、デバイスの動作確認機能の不可が必要であると考えられた。 鑑定・検案実務への導入についてはデバイスの完成が前提となっている。したがって、現時点では実施できない状況である。埼玉県内での実務への導入実験に備え、警察官等への説明資料等の検討については既に完了している。 本年度新たな試みとして、環境放射線のモニタリングを導入した。東日本大震災における原子力発電所事故を踏まえ、死体モニタリングの測定項目の一つとして検討したが、事故より日数が経過していることもあり、学内の実験では有意なデータを取得できなかった。福島県の特定地域等で実施することも検討したが、死体現象と独立して行うことは本研究課題の趣旨と乖離すると考えられたため、実施しなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
死体検案実務で使用可能なデバイスの開発を最優先項目とする。デバイスの完成が本研究課題の前提となっており、実際の死体へ適用させ、推算アルゴリズムの本格的な検討を目指す。デバイス開発の問題点は、リアルタイムと小型化という2つの性能を同時に求める必要があるが、試作を繰り返し達成したい。完成後は実務へ導入し、実データの取得及び推算アルゴリズムを検討する。 新たな試みとして、実務への導入の際に法的な問題点を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実務現場で使用可能なデバイスの開発費用に重点を置く。試作機を頻回に作成する必要があるが、残金の充当により遂行可能であると考えられる。 デバイスの完成後は実データによる検証を実施する費用に充てる。主として現場係官への説明資料作成及び現場への旅費が主体となる。 法的な問題点の検討では、法律の専門家とのディスカッションを実施するための旅費及び法律関連資料の収集費用が中心となる。
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