2011 Fiscal Year Research-status Report
神経性食思不振症における新規摂食関連転写因子AF5q31の役割の解明
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23659385
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60230108)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 転写因子 / 摂食調節 / 視床下部 / ストレス / 絶食 |
Research Abstract |
1. 野生型マウスの種々の臓器において、絶食によるAF5q31の発現変化について検討した。AF5q31の発現は、視床下部に加え、肝臓においても絶食により増加したが、下垂体では絶食により減少した。骨格筋と膵臓においてはAF5q31の発現に変化は認められなかった。2. AF5q31のAMPKシグナルに対する役割を詳細に解析した。視床下部神経細胞株GT1-7細胞へのAF5q31の強発現により、AMPKα2の発現がmRNA、及びタンパクレベルで増加した。しかし、その他のAMPKサブタイプやAMPKの上流にあるCaMKK2やLKB1の発現に変化は認められなかった。さらに、AF5q31によるAMPKα2のプロモーターの活性化をルシフェラーゼアッセイにより検討したところ、AF5q31を強発現させた細胞においてAMPKα2のプロモーター活性が亢進した。これらのことより、AF5q31は視床下部においてAMPKα2を転写レベルで特異的に誘導することが示唆された。また、GT1-7細胞にAF5q31を強発現させるとAMPKαのリン酸化は増加しなかったが、AMPKの下流の分子であるACCαのリン酸化が増加したことより、AF5q31はAMPKαのリン酸化を介することなくACCαのリン酸化を増加させる可能性が示唆された。3. グレリンによるAMPKシグナル活性化に及ぼすAF5q31の影響を検討するために、AF5q31に対するsiRNAを用いてGT1-7細胞における内因性のAF5q31をノックダウンした。グレリン処置後2時間において、コントロール細胞ではACCαのリン酸化が認められたが、AF5q31をノックダウンした細胞ではACCαのリン酸化が認められなかった。これらのことより、AF5q31はグレリン処置後2時間でのACCαのリン酸化を引き起こす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画のうち、AF5q31の組織分布の検討とストレス負荷によるAF5q31の発現変化の検討を行い、AF5q31は視床下部以外でも肝臓において絶食により誘導されることを明らかにした。本年度の研究実施計画中では、ストレス負荷後AF5q31ヘテロ欠損マウスの確立が残っており、来年度に遂行する予定である。一方、今後のAF5q31の生体内での機能の検討のために、細胞レベルでのAF5q31の機能を詳細に検討したところ、AF5q31はAMPKα2の発現を転写レベルで特異的に調節するという結果を得た。また、AF5q31はAMPKαのリン酸化を介することなくACCαのリン酸化を増加させること、グレリンによるACCαのリン酸化を引き起こすことも明らかとなり、これらの結果は第一報として現在英文雑誌に投稿中である。神経性食思不振症の患者は「グレリン抵抗性」の状態にあることより、AF5q31を介したこの新規のグレリンのシグナル伝達系の発見は、ストレス負荷後AF5q31ヘテロ欠損マウスの解析に大いに役立つと考えられる。以上のことより、本年度の研究は、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
AF5q31は、絶食やグレリンにより視床下部において誘導される遺伝子であるが、本年度の結果より、視床下部以外にも肝臓において絶食で誘導されることが明らかとなった。また、AF5q31は、AMPKα2の発現を誘導し、グレリンによるACCαのリン酸化を増加させた。今後は、ストレス負荷後AF5q31ヘテロ欠損マウスが神経性食思不振症のモデルマウスとして適切かどうかを内分泌・代謝系のパラメーターを解析することにより明らかにするとともに、今年度の結果をもとに、AF5q31の生体内機能について詳細に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. ストレス負荷後AF5q31へテロ欠損マウスが神経性食思不振症のモデルマウスとして適切かを検討するために、このマウスにおけるCRH、ACTH、コルチゾールの測定、絶食負荷時の自発運動量や体温などの自律神経系の機能の測定、高架式十字迷路試験を用いた不安反応の検討、耐糖能異常の検討、種々の血中ホルモン濃度の測定を行う。2. AF5q31は視床下部と肝臓において絶食により増加することから、ストレス負荷後AF5q31へテロ欠損マウスにおいて視床下部と肝臓における種々の生化学的異常や遺伝子異常を検討し、神経性食思不振症における様々な異常の原因を明らかにする。
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