2011 Fiscal Year Research-status Report
他者比較における自己評価:摂食障害を対象とした機能画像研究
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23659390
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
兒玉 直樹 産業医科大学, 医学部, 講師 (10352303)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 摂食障害 / 機能画像 / ストレス |
Research Abstract |
平成23年度は34名の健常女性に対して実験を行った.「やせ」「標準」「肥満」の体形につき、それぞれ12方向×2ポーズの計72枚の写真を使った課題を作成した.fMRI撮像においては、各々の画像を提示する前に、以下の2種類の教示画像のいずれかを2.5秒呈示し、その教示に従って体形画像を提示し、次の課題を与えた.1)画面女性の体重の推定 (weight estimate task),2)画面の女性と自分の体形の比較 (compare task).各々の体形画像は各5秒ずつ提示し、その際の脳血流変化を測定した.撮影後に各々の提示画像に対する推定体重、体形画像と比較したときの不安感、理想体重とともに,EDI-2(体形の不満など),STAI(一般的な不安)の回答を得た. 標準体形及びやせ体形の画像と自分の体形を比較したときの不安感は、EDI-2における「体形の不満」と正の相関を示した(標準体形r = 0.526, p<0.0001,やせ体形r = 0.536, p<0.05) 次に、前述の3つのタイプの体形画像を提示し、自分との体形比較を行ったときの脳活動をfMRIで調べると、標準体形の画像との体形比較を行っているときの不安感が高いほど、右の前島皮質の脳活動が高くなると言う正の相関がみられた(r=0.49, p<0.005 uncorrected,k=30). 前島皮質は,不安感などの陰性感情や,身体情報を統合し,自己の身体イメージを形作ることに関係していると言われる.神経性食欲不振症でも前島皮質の異常が指摘されており,食行動異常が無く体形の不満が高いのみの健常人でも同様の部位に変化が見られたことは興味深い結果と考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は課題の作成と,作成した課題における健常人の脳活動を確認することであった.平成23年度は上記の通り,写真を使用したより自然な課題の作成を行い,健常人を対象に実験を行った結果,神経性食欲不振症で活動の異常が指摘されている前島皮質が体形の不満の強さと相関することが分かった.健常人に対する実験では,過去の先行研究とは矛盾せず,現時点では研究はおおむね順調に進展できていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は摂食障害患者(20名)において同様の実験を行う(必要に応じて健常人の被験者の追加も行う)。それにより摂食障害全体としての疾患特有の変化を同定し、健常群との比較検討を行う.その際、患者群においては単に病型の把握だけではなく、エンドフェノタイプとしての人口学的パラメーター(病歴、身長体重の推移など)、EDI-2、EDE-Q、SDS, STAI、NEO-FFI、TAS-20など、心理的特徴を出来る限り測定し、それらとの関連を探る。また、摂食障害および共存する精神疾患の鑑別診断を行い、他の精神障害の影響を除去しておく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,なるべく廉価で研究を遂行することに努めた結果,予定よりも安い旅行パッケージを使用できたため,約5000円程度次年度に繰り越すこととなった.平成24年度は前年度からの繰り越し分を加えて,物品費に405千円、国内旅費に300千円を使用する予定である.
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