2013 Fiscal Year Annual Research Report
他者比較における自己評価:摂食障害を対象とした機能画像研究
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23659390
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
兒玉 直樹 産業医科大学, 医学部, 講師 (10352303)
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Keywords | 摂食障害 / 神経性食欲不振症 / 機能画像 |
Research Abstract |
神経性食欲不振症(以下AN)とは,食行動異常,自己の体形への認知の歪み(やせ願望,肥満恐怖,体形の不満)と低体重を特徴とする,若年女性(0.5%~1%)に好発する疾患である.若年に好発する疾患にもかかわらず10%前後と死亡率は高い.また治療への反応が乏しい患者が一定割合(20%程度)存在するとされ,慢性化した症例の増加も問題になっている. 現時点で病因は明らかではないが,やせを美しいとする文化やマスメディアなどに登場する一般女性よりも痩せており,それが美しいとされる女性と自己の体形との比較をすることによって,多くの若年女性が体形への不満を抱くという社会的要因が発症に関連するとされている.また神経性食思不振症を発症後は体形の不満が症状持続因子として働くと考えられている. しかし,比較対象となる体形が痩せているか太っているかで,どのように脳活動が異なるのか,また比較対象の体形の違いによって患者と健常者でどのような脳活動に差が出るのか検討した研究はなかった.今回我々は,比較対象となる体形の差によって活動が異なる脳の部位を同定し,その部分の活動が健常人とどのように異なるかfMRIを用いて検討した. 低栄養の影響を除くため身体的に回復したAN群と年齢,身長体重,教育年齢,IQなどを一致させた健常群を対象とした.今回の結果では心理テスト上ではAN回復群は自己の体形への認知の歪みを指摘できなかったが,痩せている他者と体形比較をした際に内側腹側後頭側頭皮質(mVOTC)の活動が上昇していた.この部位は社会的な場面(social scene)でhuman bodyの刺激に対して特異的に反応すると報告されており,体重回復後も痩せている他者という社会的要因にたいしてより強く反応する傾向が残っていることが示唆された.
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