2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659435
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30264039)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 正樹 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (90398298)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 難治性呼吸器疾患 / 気管支喘息 / 肺線維症 / 抗体療法 |
Research Abstract |
本研究は、難治性呼吸器疾患に対する新規抗体療法の開発を目的としている。 本年度は、難治性呼吸器疾患モデルの作製および抗体療法の新たな治療標的の探索を行った。喘息モデルは、マウスに蛋白アルブミンを感作、曝露して作製した。新しい治療標的を探索する目的で、分泌性リン脂質分解酵素欠損マウスに喘息を誘導したところ、野生型と比べて気道過敏性が増強することを見出した。分泌性リン脂質分解酵素の喘息への関与を示した報告はこれまでなく、新しい観点による病態解明と治療法開発に繋がる極めて重要な成果である。 肺に慢性的な炎症と線維化を来たし、有効な治療法のない肺線維症についても研究を進めた。最近、慢性炎症を誘導する重要な因子であることが判明したアンジオポエチン様因子 (Angptl) に着目した。我々は、免疫染色用の抗Angptl抗体を新たに作製して、マウスおよびヒト肺線維症の活動性病変部にAngptlが発現していることを確認した。この結果は、Angptlが線維化の誘導に重要な役割を果たすことを意味しており、Angptlの生理作用を阻害する中和抗体の開発、利用は、線維化を抑制する画期的な治療法として期待できる。さらに、VEGFの肺線維症への影響を検討するために、VEGFを生体内で過剰発現するトランスジェニックマウス (VEGF-TG) に肺線維症を誘導した。興味深いことに、VEGF-TGでは野生型と比較して線維化が著明に増強しており、VEGFは肺線維化を促進することが明らかになった。我々は、VEGFに対するモノクローナル抗体を肺局所で長期間産生するベクターを既に開発しており、透過性肺水腫や転移性肺水腫などの難治性呼吸器疾患に対する有用性を証明してきた。今回の研究結果から、我々が開発した抗VEGFモノクローナル抗体産生ベクターは、肺線維症に対する新しい治療法としても非常に有用であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、治療対象となる難治性呼吸器疾患マウスモデルの作製および新たな治療標的の探索を行った。疾患モデルについては、それぞれ蛋白アルブミン、ブレオマイシン、リポ多糖を用いて、気管支喘息、肺線維症、急性肺傷害の病態を、安定してマウスに再現する手法を確立できた。治療標的に関しては、遺伝子改変マウスおよびヒト検体を用いて、気管支喘息において分泌性リン脂質分解酵素、肺線維症ではAngptl、VEGFを有望な分子として見出した。これらの成果から、当初計画した研究目的は現在まで順調に達成しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、難治性呼吸器疾患モデルの作製と病態解析を行った。疾患モデルの作製には、主に野生型マウスと一般的な試薬、機器を使用した。遺伝子改変マウスを利用する場合は、他施設において作製済み個体の分与を受けた。ヒト検体は、当研究室で既に収集、保管してあるサンプルを用いた。よって、本年度の研究では高額な試薬、備品を使用する機会が少なく、研究費の一部を次年度に繰り越すことになった。 今後は、治療標的の探索を継続するとともに、新規治療法の効果を検討する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に遺伝子改変マウスを用いて病態の解析を行う。また、新たにサスペンションアレイシステムにより、サンプル中のサイトカイン、ケモカイン、成長因子、シグナル伝達因子等を網羅的に解析して、治療標的を探索する。さらに、新規治療用モノクローナル抗体の作製および有効性の検討も予定している。従って、研究費は、これらマウスの繁殖、維持および試薬、器具類の購入に充てる予定である。
|