2012 Fiscal Year Research-status Report
軽微な線維化肺を用いた網羅的遺伝子発現解析による特発性肺線維症の病態・病因解明
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23659436
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
棟方 充 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00209991)
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Keywords | 遺伝子網羅解析 |
Research Abstract |
昨年度は、本学倫理委員会での承認、UMINへの登録を終了し、2007年~2010年に集積した、IPF疑い例7例、年齢・性別・喫煙歴等を合致させた正常肺症例19例を抽出し、32,000の遺伝子についてのデータを解析し、有意な発現亢進遺伝子あるいは発現抑制遺伝子が認められた25の遺伝子を選別した。 本年度は、これらの遺伝子の中から、既にすでにIPF病態に重要な関与をすると報告されているOsteopontinやCaveolin-1などの遺伝子を除いた遺伝子について文献検索などを行い、その機能を明らかにすると共に、IPF病態への関与の可能性についての検討を行った結果、MKD(NM002391)に着目した。MKDはmidkineをコードするcDNAであり、midkineは塩基性の低分子量蛋白質で細胞の増殖、生存、遊走等様々な生物学的活性をもつ。成体での発現は弱いが、炎症性疾患の組織傷害の修復過程で強く発現することが知られている。しかし、肺の線維化におけるmidkineの関与については明らかにされていない。このため、健常者とIPF患者の血清midkine濃度をELISA法にて測定し、BAL液中midkine濃度はIPF患者と膠原病に伴う間質性肺炎(IP-CTD)患者、サルコイドーシス患者で比較した。Midkineは血清中で健常者と比較してIPF患者で有意に高値であった。また、IPF患者において、血清とBAL液中midkineはBAL液中の炎症細胞比率と正の相関関係がみられた。これらの結果から、MidkineはIPF患者の血清中で増加し、肺への炎症細胞の遊走に関与している可能性が示唆された。現在、IPF患者肺の免疫染色でのmidkine発現程度や発現細胞の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
IPF疑い例7例、年齢・性別・喫煙歴等を合致させた正常肺症例19例を抽出し、32,000の遺伝子についてのデータを解析し、有意な発現亢進遺伝子あるいは発現抑制遺伝子が認められた25の遺伝子を選別した。これら遺伝子から、OsteopontinやCaveolin-1などの遺伝子を除いた遺伝子についての検討を開始した。本年度はMKD(NM002391)に着目した検討を行い、IPFとの関連性が確認されつつある。まだ、重要な候補遺伝子が数個残っており、これらの検討が必要である。 本来は、新たな繰入患者についても検討を予定していたが、候補遺伝子が多数発見されたため、現在、それら遺伝子の臨床的意義の検討に力をいれている。
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Strategy for Future Research Activity |
IPF疑い例7例、年齢・性別・喫煙歴等を合致させた正常肺症例19例を抽出し、32,000の遺伝子についてのデータを解析し、有意な発現亢進遺伝子あるいは発現抑制遺伝子が認められた25の遺伝子を選別した。これら遺伝子から、OsteopontinやCaveolin-1などの遺伝子を除いた遺伝子についての検討を開始した。本年度はMKD(NM002391)に着目した検討を行い、IPFとの関連性が確認されつつある。まだ、重要な候補遺伝子が数個残っており、これらの検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残り数個の候補遺伝子に関して、ELISAによる血清ならびにBALF中の濃度測定、IPF肺と健常肺での免疫染色、生検組織での遺伝子発現、各種臨床パラメーターとの関連解析、等々の費用として使用予定である。
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