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2012 Fiscal Year Research-status Report

αクロトー分子のグルクロン酸認識能を基盤とする副甲状腺ホルモン抑制薬の探索

Research Project

Project/Area Number 23659444
Research InstitutionFoundation for Biomedical Research and Innovation

Principal Investigator

伊村 明浩  公益財団法人先端医療振興財団, 先端医療センター, 研究員 (60362513)

Keywordsグルクロン酸 / デリバティブ / クロトー / PTH / 有機合成
Research Abstract

クロトーは細胞外領域に酵素配列を持ち、リガンドに基質に似た糖を持つことで、生理活性を決定している。我々は現在までに、酵素学的にクロトーのグルクロン酸認識特能(弱い加水分解特性)を明らかにしている(JBC04)。従って、クロトーのグリコシダーゼ様配列による三次構造は、グルクロン酸が嵌り込むポケットを構成していると予想される。この予想は、ステロイド骨格にグルクロン酸が修飾された化合物、エストロングルクロン酸(EG)がFGF23とクロトーの結合を競合的に阻害する事実、および、FGF23リコンビナントタンパク質は大腸菌由来よりもCHO由来で遥かに効果が大きいという知見からも支持される。この問いに答えるために、当該年度で実行した研究を列挙する。①FGF23の糖鎖修飾が可能なアミノ酸部位に変異を挿入し探索したところ、178番目のスレオニンがクロトーに対する活性を決定しており、0-リンク修飾糖鎖がことを突き止めた。上記の研究から、FGF23の178番目スレオニン残基に対する修飾糖鎖の末端はグルクロン酸である可能性が極めて高い。そこで、CHO由来のリコンビナントFGF23をトリプシンで消化し、178スレオニン残基を含むペプチド断片よりMS/MS解析で修飾糖鎖の同定を行った。② 末端糖鎖を認識するSLEX, SLEA,HNK-1などの抗体を用いて、FGF23への反応性を検討した。
これらの事実に基づき、グルクロン酸デリバティブEGをマウス個体に投与し、低Caに対する5分間の分泌応答特性を観察したところ、シナカルセトの投与やクロトー遺伝子欠損と同様のPTH分泌抑制効果が見られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

副甲状腺におけるaクロトーの作用点は、FGF23受容体としてPTHの転写抑制に働いているポイントと、Naポンプのリクルート制御を介してPTHの応答性分泌に促進的に関与しているポイントの2カ所である。腎不全透析患者では正常人に比しFGF23が二桁以上高い血中濃度になっているにも関わらず、二次性副甲状腺機能亢進症に陥るケースが多いことから、αクロトーがFGF23受容体としてPTH転写抑制に与える影響は支配的ではないことが考察される。従って、αクロトーのもう一つの作用点、すなわち、Naポンプのリクルート制御を介してPTH分泌に促進的に関与するメカニズムに対し、EGが阻害的に作用すると推論できる。副甲状腺におけるEGの急性効果、すなわち、低Ca刺激に対して即時応答性に起きるPTH分泌に対して、どの程度の効果があるか、解析した。当該年度で、種々の薬剤の存在下で低Ca液を灌流した際のPTH分泌特性を示した。これによれば、EGはシナカルセト同様のPTH阻害効果を発現するためには、3オーダー高い用量が必要である。これは、さらに化学的修飾などの改善が必要であることを意味する。さらに我々は、二価イオンキレートビーズの腹腔内投与により、PTH分泌を誘導するin vivo実験系を開発済みである。この実験系を利用し、EG投与の条件で、二価イオンキレートビーズ投与マウスに対してどの程度PTH分泌を抑制できるのか、野生型マウスに対して様々な用量で試行したところ、ex vivoと同様のPTH分泌阻害効果が得られた。

Strategy for Future Research Activity

本研究の眼目は、「生体の副甲状腺で、EGがどのように、どの程度効くのか?」を評価することにある。そのためには、野生型マウスに加えて、副甲状腺機能亢進症モデルとしてのVDR-KOマウスあるいはCYP27B1-KOマウスを用いる。これらの動物に対して、陽性コントロールをシナカルセトとして、EGを種々の用量で投与した後、副甲状腺を摘出し、PTHの遺伝子転写の程度をqPCRにて低量すると同時に、PTH貯蔵量を組織抽出液のELISAで測定する。これにより、慢性的EG投与によって、PTHがどの程度影響をうけるのかを記載する。EGはFGF23とαクロトーの結合を阻害するので、EG慢性投与によってPTH産生量は増加する可能性があるが、実際にはどのような効果が得られるか、解析する必要がある。前述の知見から、αクロトーが認識する糖はグルクロン酸であることは確実である。しかし、グルクロン酸は生体内に大量に存在する糖であり、αクロトーによる認識特異性が保証されるための分子機構が存在するはずである。既に我々は、FGF23の翻訳後修飾をMS解析することにより、αクロトーが認識するスレオニン178にo結合型糖鎖が付加されていること、そして糖鎖末端には、硫酸化されたグルクロン酸が存在することを発見している。すなわち、αクロトーは、グルクロン酸に対して硫酸基が結合しているフォームを特異的に認識する可能性が高い。
進行中の作業工程であるが、エストロングルクロン酸を硫酸化した化合物を合成し、PTH分泌抑制試験に用い、その阻害効率を検討する。なお、本研究では、ランダムに硫酸化する試薬を用いる予定である。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

PTH過剰症は、腎臓透析患者(本邦で約30万人)の半数近くで発生し、QOLや生命予後にとって深刻である。現在までに判明した、PTH抑制活性を有するステロイド骨格に対するグルクロン酸付加デリバティブの実用化が、本研究の目的である。そのために、糖炭素鎖に対する硫酸基の付加を展開し、薬理作用を検証する。次年度の予算は、主としてこの合成に使用する予定である。もしランダム硫酸化によって阻害活性の上昇が認められれば、グルクロン酸の水酸基を別個に硫酸化していき、精製後阻害活性をチェックする方針である。動物実験で得たデータをフィードバックし、コンピューターモデルの妥当性を検証する。また、化合物の生体内動態を解析する。化合物デザインと検証の過程を新たな創薬モデルとして提言し、腎不全透析ガイドラインに参考意見として具申する。その知見を、シーズ医薬品として特許申請すべく準備中である。

  • Research Products

    (8 results)

All 2012 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (5 results) (of which Invited: 3 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Plasma soluble α-klotho protein levels in premature and term neonates: correlations with growth and metabolic parameters.2012

    • Author(s)
      Siahanidou T, Garatzioti M, Lazaropoulou C, Kourlaba G, Papassotiriou I, Kino T, Imura A, Nabeshima Y, Chrousos G.
    • Journal Title

      Eur J Endocrinol.

      Volume: 167 Pages: 433-40

    • DOI

      10.1530/EJE-12-0476

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Serum soluble α-klotho in hemodialysis patients.2012

    • Author(s)
      Yokoyama K, Imura A, Ohkido I, Maruyama Y, Yamazaki Y, Hasegawa H, Urae J, Sekino H, Nabeshima Y, Hosoya T.
    • Journal Title

      Clin Nephrol.

      Volume: 77 Pages: 347-351

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] クロトーが結合モチーフとして認識する糖鎖構造2012

    • Author(s)
      伊村明浩
    • Organizer
      細胞センサーの分子機構・相互連関・ネットワーク研究会
    • Place of Presentation
      岡崎
    • Year and Date
      20121128-20121129
  • [Presentation] アルファクロトーの役割: 糖鎖認識が可能にする多面性2012

    • Author(s)
      伊村明浩
    • Organizer
      The Fifteenth Lilly International Symposium
    • Place of Presentation
      大阪
    • Year and Date
      20121027-20121027
    • Invited
  • [Presentation] クロトーの奇妙な構造2012

    • Author(s)
      伊村明浩
    • Organizer
      筑波大学医学研究科TSMMセミナー
    • Place of Presentation
      つくば
    • Year and Date
      20121019-20121019
    • Invited
  • [Presentation] クロトーが認識する糖鎖の構造決定とシグナル様式の解明2012

    • Author(s)
      伊村明浩
    • Organizer
      新学術領域 シグナル修飾病 領域会議
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      20120731-20120731
  • [Presentation] Caイオンの恒常性:クロトー問題からの新展開2012

    • Author(s)
      伊村明浩
    • Organizer
      抗老化学会
    • Place of Presentation
      横浜
    • Year and Date
      20120623-20120625
    • Invited
  • [Remarks] 先端医療センター

    • URL

      http://www.ibri-kobe.org/laboratory/

URL: 

Published: 2014-07-24  

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