2011 Fiscal Year Research-status Report
筋萎縮性側索硬化症原因遺伝子TLSのメチル化異常による発症機構の解明と治療法開発
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23659461
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
黒川 理樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70170107)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 酵素 / 遺伝子 / 核酸 / 生体分子 / 発現制御 |
Research Abstract |
我々は、非コードRNA(ncRNA)がTLS(Translocated in liposarcoma)/FUSに結合して、TLS機能を制御するRNAリガンドとして作用することを報告した(Nature:454, 126-130,2008)。最近、TLSは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子として再発見された。質量分析の結果は、ALS変異型TLSにはアルギニン(ARG)特異的メチル化酵素PRMT5の結合が消失していた。この結果から、変異型TLSはARGメチル化消失とそれに伴うタンパク質結合の異常から、不溶性凝集体を形成してALSを発症する仮説を立てた。 本研究の目的は、この仮説の検証と変異型TLSのPRMT5結合を回復させるRNAリガンド作成である。このRNAリガンドはALS治療法開発に大きな前進をもたらすと期待される。なお、PRMT1に関しても同様な結果が得られたことから、これについても解析を進めている。平成23年度は、PRMT5によりメチル化される正常型TLSのアルギニン残基を正確に決めることから始めた。我々はTLSのR216/R218, R242, R394がジメチル化されることを報告した(Du, BBRC:404, 991-6,2011)。そこで、これらのジメチル化されたアルギニン残基のみを認識できるモノクローナル抗体の作成に着手した。PRMT5は、対称型ジメチル化を触媒し、PRMT1は非対称型ジメチル化を触媒することが知られている。そこで、R216/R218, R242, R394近傍の10アミノ酸残基を含むペプチドに、対称および非対称のジメチル化アルギニンを導入したペプチドを合成し、総計6種類のモノクローナル抗体の作成を試みた。その結果、R242の非対称型ジメチル化(PRMT1が触媒)以外の、5種類のモノクローナル抗体作成に成功した。これは大きな進捗である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、4個のメチル化アルギニン部位に特異的なモノクローナル抗体作成に成功した。この抗体を用いた実験も良好に推移している。以上から、本研究課題は順調に進展していると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
R216/218対称型ジメチル化モノクローナル抗体(F4)を用いたin vitroのPRMT5によるTLSメチル化の解析から、このメチル化にはヒトHeLa細胞核内のタンパク性因子のTLSへの結合が要求された。今までに質量分析の結果から、5種類のタンパク質が候補として見出された。いずれもRNA結合タンパク質であった。このようにTLSのメチル化には特異的複合体形成が必要で、精妙な調節を受けることが判明した。このR216・R218メチル化有無によるRNA結合能の変化が予想される。この知見からALS病変との関連を調べ、有用なRNAリガンド同定に結び付ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下のような研究費の使用計画を立てた。1.物品費 720,0002.旅費 300,0003.講演者謝金 100,0004.その他 150,000
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