2011 Fiscal Year Research-status Report
ゴーシェ病遺伝子変異によるパーキンソン病促進のメカニズム
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23659462
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
橋本 款 (財)東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 副参事研究員 (50189502)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / ゴーシェ病 / リソソーム |
Research Abstract |
弧発性のパーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)においてゴーシェ病の原因遺伝子GBAの変異が有意に高いこと、すなわち変異型GBAが弧発性シヌクレイノパチーの危険因子として作用することが、国内外の研究者により確立されたことは重要である (Sidransky E, N Engl J Med. 2009, Mitsui J, Arch Neurol. 2009)。ゴーシェ病はGBA遺伝子の変異が原因で、GBA活性が低下し、細胞内に糖脂質が大量に蓄積する常染色体劣性遺伝の代謝異常症である。臨床的に肝脾腫、貧血、易骨折性などを主な特徴とし、さらに、けいれん、斜視、開口困難などの神経障害を呈する。現時点において、ゴーシェ病の原因となるGBAの変異がどのようにしてシヌクレイノパチーを促進するかは不明である。しかしながら、GBA変異のヘテロ接合性により,PDに罹患しやすくなること(Sidransky E, N Engl J Med. 2009)、GBAの変異をともなうPD剖検脳のレビー小体においてGBAの免疫原性が観察されること(Goker-Alpan et al. Acta Neuropathol. 2010)などを考慮すれば、ゴーシェ病を引き起こす変異型GBAは野生型GBAに比べて凝集能が高く、このことが原因でαsynの凝集を促進し、神経変性を促進するという可能性が考えられる。本申請においてはこの仮説を我々が開発した新規Tgマウスの作製・解析を通して証明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は高齢期のαsynTgマウスの脳に神経軸索変性所見である神経軸索腫脹(globule)が形成されることを観察し、この中にガングリオシドーシス特有の病変を思わせるような多重膜構造物(MCB:membranous cytoplasmic bodies)を見いだしている。この他にも、オートファゴソームの蓄積やグリオーシスの他、GΜ3ガングリオシドーシスの患者脳に報告された特徴的なミエリン梢の断裂像を認めている(関川ら、投稿準備中)。これらの結果はシヌクレイノパチーにおいてガングリオシド―シス病変が存在することを示しており、LSDとシヌクレイノパチーの間に、共通する病理が存在することを強く支持するものである。 興味深いことに、LSDの中でも、ゴーシェ病とパーキンソニズムの関係はとりわけ特別である。実際、これら2つの疾患の臨床的関連性、GBAの変異とパーキンソニズムの相関性に関して以前より報告されてきたが、最近の大規模なゲノム解析により、GBAの遺伝子変異が弧発性シヌクレイノパチーの危険因子として作用することが確定されたのである(Sidransky E, N Engl J Med. 2009, Mitsui J, Arch Neurol. 2009)。これらの結果は、シヌクレイノパチーにおけるGBA変異がアルツハイマー病におけるApoEの遺伝子型の役割に匹敵するような重要性をもつことを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
ゴーシェ病におけるグルコセレブロシダーゼ(GBA)の変異がシヌクレイノパチーの病態を促進する機序は明らかでない。一つの可能性は本申請におけるようにGBAがアミノ酸変異により構造変化を起こして凝集しやすくなる結果、αsynの凝集を誘発し神経変性に至るというものである。GBAの変異によるゴーシェ病は常染色体劣性遺伝であるが、蛋白凝集(toxic gain of function)が原因となればGBAの変異によるPD、DLBの発症は優性遺伝となる。このようにある一つの遺伝子がある病気(ゴーシェ病)においては劣性形質として働き、他の病気(シヌクレイノパチー)に関しては優性形質となるという概念は興味深いと言える、非常に興味深い現象である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように、「もし、このようなGBAの凝集(toxic gain of function)仮説が正しければ、変異型GBAの凝集を何らかの方法で抑制する、あるいは、変異型GBAの凝集物をワクチン療法などで取り除くなどの治療戦略が神経変性の抑制に効果的かも知れないと考えられる。このように、本研究はPDや他のシヌクレイノパチーの治療開発においても重要である。
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Research Products
(4 results)