2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23659467
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪田 直人 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50396719)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | エネルギー・糖質代謝異常 |
Research Abstract |
AMPキナーゼ(AMP-activated protein kinase)は5' AMPによって活性化されるセリン/スレオニンキナーゼである。以前より、AMPキナーゼは細胞内のエネルギーセンサーとして作用していることが知られていたが、最近、視床下部を介して個体のエネルギー状態や摂食についてもコントロールしていることが報告され注目を集めていた。アディポネクチン受容体(AdipoR1/AdipoR2)はいずれも視床下部弓状核にその発現が認められ、免疫組織学的検討によりAdipoR1とレプチン受容体は視床下部弓状核においてcolocalizeしていること明らかとなった。また野生型マウスの髄液(CSF)中にはアディポネクチンが存在し、アディポネクチン欠損マウスに対し外来性にアディポネクチンを静注するとアディポネクチンが末梢循環からCSF中に移行することが確認された。興味深いことに、CSF中のアディポネクチンは、血清中とは異なり12量体以上の多量体はほとんど存在せず、6量体と3量体のみであった。また血中やCSF中のアディポネクチン濃度や視床下部AdipoR1の発現はいずれも絶食時に高く、摂食後に有意に低下していた。次にアディポネクチンの摂食やエネルギー調節における役割について検討したところ、アディポネクチンは主にAdipoR1を介して視床下部弓状核のAMPキナーゼを活性化し、摂食量を増加させ、個体のエネルギー消費量を抑制することが明らかとなった。またアディポネクチン欠損マウスでは、絶食時の視床下部弓状核のAMPキナーゼ活性が野生型マウスに比較して低く、高脂肪食下において摂食量の低下と酸素消費量の増加が認められた。以上の結果から、アディポネクチンは主に絶食時すなわち脂肪量が低下した状態において作用し、摂食促進とエネルギー代謝抑制を介して脂肪蓄積を増加するような生理的作用を持っており、そのため脂肪量が過剰となった肥満の状態ではアディポネクチンレベルが減少する。ところがこれが骨格筋や肝臓においてはインスリン抵抗性を引き起こす原因の1つになっていると思われる。
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