2011 Fiscal Year Research-status Report
疾患モデル動物における小胞体ストレスから細胞死に至るプロセスの解析
Project/Area Number |
23659475
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422770)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | バゾプレシン / 小胞体ストレス / 細胞死 |
Research Abstract |
家族性中枢性尿崩症(FNDI)は生後数か月から数年で抗利尿ホルモンであるバゾプレシンの合成・分泌が低下し、多尿が発症する常染色体優性遺伝の疾患である。FNDIの原因となる変異遺伝子はバゾプレシンのキャリア蛋白であるニューロフィジン領域に多く存在し、変異蛋白が小胞体内腔に蓄積することでバゾプレシンニューロンの機能が障害され、多尿が発症することが報告されている。本研究の目的は変異ニューロフィジンを発現するFNDIモデルマウスを用い、小胞体ストレスがどのような機序でバゾプレシンニューロンの細胞死を惹起するかを明らかにすることである。小胞体ストレスのバイオマーカーであるBip mRNAは野生型マウスの視床下部視索上核で基礎状態において発現し、その分布はバゾプレシンmRNAと類似していた。Dual in situ hybridization法を用いた検討ではBip mRNAがバゾプレシンニューロンに発現していることが確認された。また、脱水負荷によって視索上核におけるBip mRNAはバゾプレシンmRNAとともに増加することが確認された。さらに脱水負荷後の視索上核におけるBip mRNAの発現は、野生型マウスと比較しFNDIモデルマウスにおいて有意に高値を示した。以上の所見は、基礎状態においてバゾプレシンニューロンは小胞体ストレスにさらされていること、脱水負荷で小胞体ストレスが増強すること、さらにFNDIモデルマウスでは脱水負荷により野生型マウスよりバゾプレシンニューロンの小胞体ストレスが増強することを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱水負荷により野生型マウスのバゾプレシンニューロンにおいて小胞体ストレスが生じることを確認でき、FNDIモデルマウスに脱水負荷を与える今後の検討の基盤を築くことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
脱水負荷がバゾプレシンニューロンに小胞体ストレスを与えることが明らかになったことから、FNDIモデルマウスに間欠的脱水負荷(一週間に48時間の絶水負荷)を繰り返し与え、バゾプレシンニューロンの小胞体内腔に変異蛋白が蓄積することを加速させる。間欠的脱水負荷を4回もしくは12回繰り返した時点でFNDIモデルマウスを屠殺し、光学顕微鏡を用いてバゾプレシンニューロン小胞体内腔の凝集体を反映する封入体の数、大きさの継時的変化を観察する。小胞体ストレスマーカーであるBip mRNA、アポトーシスのマーカーであるChop mRNAの視床下部視索上核における発現はin situ hybridization法を用いて検討する。また、電子顕微鏡を用いて、脱水負荷が小胞体内腔の凝集体蓄積に及ぼす影響を検討する。さらに、細胞死が惹起される過程でオートファギーが関与する可能性を考え、GFP-LC3トランスジェニックマウスとFNDIモデルマウスを交配し、脱水負荷によりオートファギーが亢進しているか否かをバゾプレシンニューロンにおけるGFPの発現を検討することで明らかにする。また、免疫染色法、in situ hybridization法によりバゾプレシンニューロンの数の継時的変化を検討する。もし繰り返しの脱水負荷によりFNDIモデルマウスにおいて視床下部バゾプレシンニューロンの減少、すなわち細胞死が認められたら、電子顕微鏡を用いて細胞死に向かうバゾプレシンニューロンの形態的特徴を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノックインマウス、トランスジェニックマウスの維持、繁殖に10万円。in situ hybridization法、免疫染色法の各種試薬に80万円。
|