2011 Fiscal Year Research-status Report
新規遺伝子変異ラット作製システムを用いた内分泌代謝病態モデルラットの開発と解析
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23659476
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中尾 一和 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00172263)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 疾患モデルラット / エネルギー代謝 / 脂肪細胞 / レプチン |
Research Abstract |
1.レプチン欠損ラットを用いた解析ヒトにおいてチアゾリジン化合物は脂肪肝を改善させるが、ob/obマウスでは脂肪肝を悪化させる。そこでチアゾリジン化合物の脂肪肝に対する作用におけるマウスとラットの違いを検討する。レプチン欠損ob/obマウス(マウス)およびレプチン欠損Lepmkyo/Lepmkyoラット(ラット)に対してピオグリタゾン(P)、ロシグリタゾン(R)を投与した。マウス、ラットともにPおよびR投与によりインスリン抵抗性の改善を認めた。マウスではPおよびR投与により肝臓重量増大、肝臓内中性脂肪含量増加を認めた。一方、ラットではPおよびR投与により肝臓重量減少、肝臓内中性脂肪含量減少を認めた。肝臓PPARgmRNA発現は、マウスでは野生型と比較して増加を認め、PおよびR投与によりさらなる増加を認めたが、ラットではPおよびR投与前後いずれにおいても野生型と同等であった。チアゾリジン化合物の脂肪肝に対する効果は種族差があり、肝臓PPARgmRNAの発現調節の違いによるものの可能性が示唆された。2.脂肪萎縮症モデルラットの解析セイピン遺伝子異常は全身性脂肪萎縮症の原因であるが、セイピン蛋白質の機能は殆ど解明されていない。我々は60番目のアミノ酸が終止コドンとなるセイピンノックアウト(SKO)ラットを作製した。これまでにSKOラットを用いた検討により、褐色脂肪組織の発生にセイピンは必要ないこと、精子形成におけるセイピンの重要性、中枢神経系の正常発育におけるセイピンの関与を明らかにした。現在、そのメカニズムを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エネルギー代謝におけるマウスとヒトとの種差がしばしば問題になってきたが、今回の研究で、ラットの肥満モデルを用いて脂肪細胞の発生や糖代謝に重要なPPARの意義に関する種差が明らかになった。また、これまでにノックアウトマウスが作られてこなかったセイピンのノックアウトラットを用いることによりセイピンの生理的意義の解明が飛躍的に進んだ。以上より、ラットモデルの開発と有用性が示されている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きレプチン欠損ラットおよびセイピンノックアウトラットを用いた解析を進める。また遺伝子異常ラットおよび部分性脂肪萎縮症原因遺伝子であるLMNAの遺伝子異常ラットの開発に成功しており、これらの疾患も出る動物を用いた解析を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○疾患モデルラットの糖脂質代謝におけるマウスモデルとの比較検討ヒトにおける糖取り込みの約7割は骨格筋で行われるのに対しマウスでは肝臓が主要な糖取り込み臓器であることが知られている。ラットでは糖取り込みにおける比重がよりヒトに近いことが報告されている。そこで上記で作製した疾患モデルラットを対象に、[6,6-2H]glucose と[2-14C]投与を組み合わせた高インスリン正常血糖グルコースクランプ試験を行うことにより体全体の糖のターンオーバーと筋肉における糖取り込み、肝臓における糖取り込みのレプチン投与における変化を検討する。○疾患モデルラットを用いた糖脂質代謝改善薬の薬効薬理の再検討マウスの肝臓では脂肪の蓄積に伴い脂肪合成に関与する核内転写因子、PPARγの遺伝子発現が上昇し、またPPARγアゴニストであるチアゾリジン誘導体の投与により脂肪肝が増悪することが知られている。一方、ヒトにおいては既に糖尿病治療の臨床で使用されているチアゾリジン誘導体の使用により脂肪肝が改善したとの報告はあるが増悪の報告はない。したがってチアゾリジン誘導体やPPARγの結合親和性が報告されている一部のアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)などの糖脂質代謝に関するマウスを用いた研究での薬効薬理についての報告は、他の種族で追試する必要がある。今回作製した疾患モデルラットに対しこれら薬剤の糖脂質代謝に及ぼす影響を再検討する。
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Research Products
(8 results)