2011 Fiscal Year Research-status Report
SGA性低身長機序におけるGHーIGFー1軸へのエピジェネティック変異関与の解明
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23659480
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
芝崎 保 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00147399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 崇宏 日本医科大学, 医学部, 講師 (40366654)
大畠 久幸 日本医科大学, 医学部, 講師 (80256924)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 低出生体重 / 追いつき成長 / 低栄養 / 成長ホルモン受容体 / マイクロRNA / エクソソーム |
Research Abstract |
出生時の身長や体重が在胎期間に比して小さいSGA (small for gestational age) 児の多くは成長に伴い追いつき成長を示すが、その一部には追いつき成長を示さない低最終身長児もいる。この追いつき成長を規定する内分泌学的因子の詳細は不明である。我々は妊娠中のカロリー制限により生じるラット低出生体重仔のうち、離乳時の21日齢時までに対照ラットの体長および体重の平均-2SD以内まで追いつき成長しない、短体長低体重ラット(SGA-NCG, small for gestational age and non-catch up growth) では、血中インスリン様成長因子(IGF)-1および肝臓での成長ホルモン受容体 (GHR)、IGF-1、IGFBP-3のmRNA発現量が対照ラットに比べ低下していることを明らかにし、本研究ではこの機序にGHR遺伝子の3’非翻訳領域に結合する配列を有するmiR-322の発現亢進が関与する可能性について検討した。 miR-322の肝での発現は体長やGHRの発現と有意な負の相関を示すこと、初代培養肝細胞にmiR-322を過剰発現させるとGHR mRNAと翻訳活性が低下することを明らかにした。近年、マイクロRNAはエクソソームと呼ばれる小胞にくるまれて細胞外へと放出されることが明らかになっている。ラット初代肝細胞培養上清およびラット血中から抽出したエクソソームからmiR-322を検出し、SGA-NCGラット仔の血中エクソソーム内のmiR-322が対照の仔や追いつき成長したSGAラット仔のそれよりも増加していることを明らかにした。以上のことから、SGA-NCGラットでは肝でのmiR-322発現が亢進し、その結果、GHRのmRNA発現とタンパク質への翻訳が低下したために短体長低体重に留まった可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験計画で目的としていたmiR-322によるGHRのmRNAとタンパク質の発現調節機構の存在を明らかにし、SGA-NCGラットでは肝でのmiR-322発現が上昇したためにGHRのmRNA発現とタンパク質への翻訳が低下し、その結果、短体長低体重を呈した可能性を明らかにした。さらに、次年度実験を計画していた血中エクソソーム内のmiR-322の検出にも成功し、SGA-NCGラット血中エクソソーム内のmiR-322含量が対照ラットのそれより増加していることも明らかにした。この結果は血中エクソソーム内のmiR-322の測定により、追いつき成長の障害を定量的に調べる診断法の開発に応用できる可能性を示唆するものである。 本年度予定していたmiR-322の機能を阻止するデコイを発現する組換えアデノウイルスの作成が完了していないため、次年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作成が完了しなかった、miR-322の機能を阻止するデコイを発現する組換えアデノウイルスを作成し、それをSGA-NCGラット仔に投与することにより、追いつき成長を示せるようになるか、検討する。なお、アデノウイルスは尾静脈に投与することにより、そのほとんどが肝臓に感染することが可能との報告もあるため、本研究でも同様の手法を用いる予定である。 SGA-NCGラットの肝でmiR-322の発現が上昇した機序を明らかにするため、miR-322をコードするDNAのメチル化の解析を行う。現在、バイサルファイトシークエンシング法でメチル化の変化の生じる部位の検討を行っている。メチル化の変化が見られる領域が特定できたならば、今後は多くの検体数を解析することができるmethylation specific PCR法を用いた解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究は既存の設備や機器で行うことができる。一方で多くの研究試薬等が必要となるため、研究費は全て消耗品費として使用する予定である。
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