2011 Fiscal Year Research-status Report
シグナル伝達・転写活性化因子を標的とした画期的抗腫瘍剤の開発
Project/Area Number |
23659487
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
直江 知樹 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50217634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / STAT3 / STAT5 / FLT3 |
Research Abstract |
本研究では、肝疾患治療薬として開発された新規小分子化合物(OPB化合物と称する)がユニークなSTAT3/5阻害活性を有していることからスタートし(1)いかにSTATリン酸化が阻害されるか、特にin vivoにおける化合物の標的分子の観点からの研究を進める(2)ヒト白血病検体を免疫不全マウス(NOG)に移植したモデルを使い、抗腫瘍活性を評価し、Proof-of-Concept(POC)を確立する(3)STAT阻害における分子モニタリング系の確立と感受性のバイオマーカー系を確立する(4)腫瘍幹細胞への影響を上記NOGマウス継代移植系で明らかにする(5)マウスの腫瘍系で、抑制性T細胞への阻害剤の影響と、抗腫瘍免疫におよぼす影響について解析する。平成23年度実績概要(1)OPB化合物は細胞株やin vivo腫瘍ではSTAT3/5のリン酸化を阻害するが上流の非受容体型チロシンキナーゼJAK2や受容体型チロシンキナーゼFLT3のリン酸化は抑制しなかった。一方精製JAK2タンパク質によってSTAT3のリン酸化をみるin vitro kinaseアッセイにおいては、in vitroでOPB化合物を反応させても抑制は認められず、OPB化合物で処理した感受性細胞株から免疫沈降させたJAK2を用いた場合のみ抑制が認められた。従って、STAT阻害作用は間接的に基質を標的とした阻害であることが示唆された(2)NOGマウスでヒト造血器腫瘍が継代的に維持しうる系を確立しており、この系を用いて、抗腫瘍効果を評価した。FLT3/ITDやBCR-ABLなどが関与する腫瘍に関しては、極めて高い腫瘍抑制効果と延命効果が認められた。正常造血への影響は、臍帯血コロニー抑制、NOGマウスへ移植した臍帯血造血の抑制の系を用いて検討したが、有意な抑制効果を認めなかった(3)腫瘍幹細胞の多い静止期細胞にも有効であったが継代移植系での腫瘍根絶は困難であった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作用機序の解明についてはおおむね当初計画は達成されたが、STAT分子そのものが標的ではない可能性が出てきた。ヒト腫瘍に対するProof-of-Concept(POC)は前臨床段階で確立されたが、腫瘍幹細胞の根絶は困難であった。阻害剤感受性に関するバイオマーカーについてはSTATリン酸化に加えて、ミトコンドリア活性による酸化的リン酸化の可能性もでてきたので、さらなる検討が必要である。これまでの成果は2011年12月開催の米国血液学会(サンジエゴ)で口演に採択された。A Novel STAT3 Inhibitor OPB-31121 Induces Tumor-Specific Growth Inhibition in a Wide Range of Hematopoietic Malignancies without Growth Suppression of Normal Hematopoietic Cells、Fumihiko Hayakawa, MD, PhD, Keiki Sugimoto, Shingo Kurahashi, MD, PhD, Takumi Sumida, and Tomoki Naoe, MD, PhD。そのほか、日本血液学会、日本癌学会などで学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
作用機序の解明についてはおおむね当初計画は達成されたが、腫瘍を投与してからのメタボローム解析を行ったところ、ミトコンドリアによる酸化的リン酸化が最も早期に変化していることが明らかになりつつあり、STAT経路との関わりについてあきらかにする。同時に、阻害剤感受性に関するバイオマーカーについては酸化的リン酸化に関わる代謝物など、STATリン酸化と並行した探索を続ける。マウスの腫瘍系で、抑制性T細胞への阻害剤の影響と、抗腫瘍免疫におよぼす影響について解析する。造血器腫瘍患者を対象としたOPB-51602の第1相試験が始まったので、この薬剤でのPlasma Bioassayあるいはバイオマーカーの検証などを付随して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウス購入および消耗品費(抗体、試薬、培養液、FCSなど)にあてる。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Retention of CD34(+) CML stem/progenitor cells during imatinib treatment and rapid decline after treatment with second-generation BCR-ABL inhibitors.2012
Author(s)
Minami Y, Abe A, Minami M, Kitamura K, Hiraga J, Mizuno S, Yamamoto K, Sawa M, Inagaki Y, Miyamura K, Naoe T.
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Journal Title
Leukemia
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Presentation] Retention of Slow-Cycling CD34+ cells During Imatinib Treatment and Rapid Decline After 2nd ABL-TKI Treatment in Ph+ Leukemia Cells.2011
Author(s)
Minami Y, Abe A, Minami M, Kuwatsuka Y, Fukushima N, Kitamura K, Hiraga J, Yamamoto K, Jamieson C, Naoe T.
Organizer
The American Society of Hematology 53th Annual Meeting
Place of Presentation
San Diego, USA
Year and Date
2011.12.10