2012 Fiscal Year Annual Research Report
可溶性T細胞レセプター修飾分子を用いた革新的がん治療法の開発
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23659489
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
安川 正貴 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60127917)
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Keywords | 細胞障害性T細胞 / T細胞レセプター / 遺伝子治療 / 白血病 / 免疫療法 |
Research Abstract |
近年、腫瘍特異的T細胞レセプター(TCR)遺伝子導入による悪性腫瘍に対する新規遺伝子治療が注目されている。さらに、TCR遺伝子産物を可溶化し、様々な修飾を加えて、がんの治療や免疫療法感受性の予測などに応用しようとする試みが始まろうとしている。本研究では、その基礎研究として、我々が樹立した白血病特異的細胞傷害性T細胞(CTL)クローンからTCR遺伝子を単離し、末梢血T細胞に遺伝子導入して作製した人工CTLの様々な抗腫瘍効果を検討し、以下の結果が得られた。 (1)内在性TCR発現を抑制し、発現させたいTCRのみを選択的に発現できる新規レトロウイルスベクターを構築した。このベクターを用いることで、目的とすべきTCR発現効率が向上し、内在性TCRならびにミスペアリングTCRの発現を抑制できることが示された。(2)WT1-TCR, hTERT-TCRおよびAurora-A-TCR発現人工CTLの抗原特性を検討したところ、親CTLクローン同様に、WT1, hTERTおよびAurora-Aペプチド特異的HLA拘束性の細胞傷害活性を示した。(3)HLA-A24陽性WT1発現ヒト白血病細胞をNOGマウスに移植後、コントロールCD8陽性T細胞(コントロールCTL)またはWT1-TCR遺伝子導入人工CTLを移入した。その後、マウスの生存率、ならびにヒト白血病細胞のマウス体内での増殖を経時的に観察した。その結果、WT1-TCR遺伝子導入CTLを移入した場合のみ、明らかな白血病細胞の増殖抑制とマウスの生存期間延長が認められた。 以上のことから、がん特異的TCR遺伝子導入T細胞を用いた養子免疫療法は、安全で効率的ながん治療法となることが示された。現在、我々が単離したTCR遺伝子を用いて、TCRタンパク質の合成を試みており、可溶性TCRによる新規治療法の開発も遂行している。
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