2011 Fiscal Year Research-status Report
再生医療のための部位特異的遺伝子組込み法の開発:発生工学的手法を用いた基盤研究
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23659493
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
小澤 敬也 自治医科大学, 医学部, 教授 (30137707)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
卜部 匡司 自治医科大学, 医学部, 講師 (40213516)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再生医療 / 幹細胞 / iPS細胞 / 遺伝子導入 / 遺伝子組込み |
Research Abstract |
血友病Aの新たな治療戦略として、iPS細胞に血液凝固第VIII因子遺伝子を導入し肝細胞に分化させ移植する治療法が可能か検討するため、iPS細胞の遺伝子操作に主眼を置き研究を進めた。遺伝子導入には、非病原性の野生型アデノ随伴ウイルス(AAV: adeno-associated virus)が第19番染色体長腕AAVS1領域に組み込まれる性質を利用した部位特異的遺伝子組込み法を応用する。この方法は、AAVゲノムのAAVS1特異的組込みを介在する配列と非構造蛋白質のRep蛋白質を利用するもので、比較的高頻度で目的遺伝子が安全と考えられるAAVS1領域に組み込まれる。 本年度はモデル実験をマウスの系で行うために、すでに作出したヒトAAVS1領域を持つトランスジェニックマウス13系統から、シングルコピーのAAVS1領域を持ち安定に次世代に継代できる2系統を選び出した。また、導入遺伝子として当初GFP発現ユニット(IRES配列でさらにブラストサイジン耐性遺伝子(bsr)を連結したもの)をAAVのITR (inverted terminal repeat)配列で挟んだプラスミドを予定していたが、汎用性を持たせるためbsrの代わりにハイグロマイシン耐性遺伝子(Hpt)に置き換えた。またITR配列以外に、Rep蛋白質の発現をドライブするp5プロモーター内にITRと同様の組込み介在配列(p5内配列)が存在するが、我々の最近の研究によりp5内配列は遺伝子組込みの方向性を規定できることが分かってきておりITRをp5内配列に置き換えたものを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画を変更し薬剤耐性遺伝子をHpt遺伝子に、ITR配列をp5内配列変更しGFP遺伝子導入用プラスミドの再構築などを行ったため、予定より遅れ気味である。しかしながら遺伝子導入後のiPS細胞クローン化のスクリーニングで、iPS細胞では汎用されているハイグロマイシンを利用できるメリットは大きく、遅れを挽回できると考えている。また、ITR配列をp5内配列に置き換えたプラスミドの構築に関しても、AAVS1への組込み後のGFPもしくは第VIII因子遺伝子の長期間の発現安定性の検討においては組込み方向が規定されるp5内配列の方が比較しやすいと考えられる。iPS細胞の作成に関しては2系統のトランスジェニックマウスの皮膚組織から線維芽細胞を分離、培養に着手し、リプログラミング遺伝子を発現するセンダイウイルスベクター(MBL社)を感染させる予備実験を開始しており、こちらは順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当初の計画ではGFP遺伝子をAAVS1領域に組み込んだiPS細胞を樹立し、その肝細胞への分化誘導実験まで行う予定であったが遅滞気味である。今後はまずシングルコピーのヒトAAVS1を持つ2系統のトランスジェニックマウスから質の良いiPS細胞の樹立を第一の目的として研究を行う。iPS細胞が樹立されれば、未分化状態に維持され、かつ各種細胞へ分化できるか解析し、良いiPS細胞を選び出す。iPS細胞におけるAAVS1特異的遺伝子組込み操作に関しては、遅れを挽回するために、GFP/Hpt遺伝子プラスミドと第VIII因子/Hpt発現プラスミドのトランスフェクション以後のステップを並行して行う。各々クローン化しAAVS1領域にGFPもしくは第VIII因子が組み込まれたものを選び出す。発現の良好なクローンを更に選別し、未分化状態であることを確認するとともに、多能性幹細胞の性質が維持されているかを検討し、AAVS1に外来遺伝子が組み込まれてもiPS細胞の形質、機能に変化が生じないか解析する。次のステップとして肝細胞へ分化誘導実験を行い、GFP、第VIII因子の発現が維持され、肝細胞にも分化誘導できるか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は本年度に引き続き、1)トランスジェニックマウスからの線維芽細胞の分離培養、2)センダイウイルスベクターを用いたiPS細胞の樹立、3)iPS細胞への遺伝子導入、4)導入後のiPS細胞のクローン化、選別、5)クローン化iPS細胞の解析遂行する予定である。したがって、当初の予定通り、遺伝子工学関連試薬、組換えセンダイウイルスベクター、細胞培養関連製品などの消耗品の物品費として700,000円を計上している。また、成果の発表のための学会出張の旅費として300,000円を計上している。
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Research Products
(16 results)