2011 Fiscal Year Research-status Report
膠原病の遺伝素因におけるdanger signal応答遺伝子NLRP3の役割
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23659495
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土屋 尚之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60231437)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | NLRP3 / 遺伝子多型 / 全身性エリテマトーデス |
Research Abstract |
本研究では、「免疫系多因子疾患の発症においては、ユビキタスに存在する環境因子に対する応答性の個体差が重要である」との仮説のもとに、シリカ、アスベスト、コレステロールなどの結晶や、紫外線(UVB)、酸化ストレス、さらには尿酸、ATPなどのdanger signalを感知してIL-1 beta, IL-18産生を誘導するNLRP3(NALP3)に注目し、その遺伝子多型と、日本人集団における膠原病の発症や臨床病型との関連を検討した。HapMapデータベースを利用し、NLRP3遺伝子より、日本人集団におけるtagSNP 16個所を選定し、まず、過去に疾患との関連の報告がある5個所のSNPにつき、日本人集団における全身性エリテマトーデス(SLE) 440例、健常対照群 550例のゲノムDNAを用いた関連研究を施行した。この結果、rs1539019A/A遺伝子型とSLEとの関連が検出された(P=0.030, オッズ比[OR]1.45、95%信頼区間[CI]1.04-2.03)。この関連は、腎症合併SLE群において顕著であった(P=0.011, OR 1.66, 95%CI 1.13-2.46)。また、rs461266Cアリル頻度の腎症合併SLEにおける増加も検出された(P=0.040, OR 1.27, 95%CI 1.01-1.60)。以上の結果から、NLRP3多型とSLEとの関連が、国内外を通じてはじめて検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、東日本大震災の影響により、補助金交付が8月になり、さらに、10月に至るまで、補助金全額が支給されるか否かが確定しなかったこと、加えて、本学自体も少なからぬ被害を受けたことにより、本格的な研究の開始が8月以降に遅れたため、初年度に予定したtagSNP解析のすべてを完了することはできなかった。しかし、完了した範囲において、国内外を通じて初めての興味深い知見が得られていることから、研究全体としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
NLRP3遺伝子のtagSNPのうち、未解析のものすべてについて、SLEとの関連研究を施行するとともに、全身性強皮症(SSc)、ANCA関連血管炎(AAV)との関連についても検討する。関連が検出されたSNP周辺領域のリシークエンス解析により、病因的多型部位を探索するとともに、バイオインフォマティクスおよび実験的手法により、疾患関連多型による機能的影響を探索する。あわせて、臨床病型と関連する多型部位を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、東日本大震災の影響により、補助金交付が8月になり、さらに、10月に至るまで、補助金全額が支給されるか否かが確定しなかったこと、加えて、本学自体も、節電の影響により、機器の稼働時間が限定されたことなどにより、本格的な研究の開始が8月以降にずれ込んだ。当初の予定では、大量のSNP解析およびリシークエンス解析のために、平成24年度から、非常勤研究員を雇用し、謝金を支出する予定であったが、10月に至るまで補助金全額が支給されるか否かが確定しなかったため、初年度に研究員を雇用することは断念した。平成24年度には、平成23年度に未使用である研究費と平成24年度請求額とを合わせ、当初の予定より平成24年度における勤務時間を増やした形で、研究員を雇用する計画とする。また、これにあわせ、遺伝子解析に要する試薬・消耗品代や旅費も、当初の平成24年度分予定額以上が必要となるため、平成23年度未使用分を平成24年度請求額にあわせて使用する必要がある。以上により、平成24年度未使用額と平成24年度交付額をあわせた約251万円のうち、101万円を試薬・消耗品代、120万円を研究員への謝金、20万円を旅費、10万円を論文掲載料として使用する計画である。
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