2011 Fiscal Year Research-status Report
ファージ溶菌酵素を利用するセラチア菌感染症に対する新制御法の開発
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23659524
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松下 憲司 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (20332835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00190439)
大畑 雅典 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50263976)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バクテリオファージ / 溶菌酵素 / ファージ療法 / セラチア菌 / グラム陰性菌 / 外膜 |
Research Abstract |
本研究では、外膜透過に関係すると予想されるBacillus amyloliquefaciensファージ由来の外膜通過ペプチド領域(C100)とセラチアファージ溶菌酵素を融合させ、その融合溶菌酵素を利用するセラチア菌感染制御法の開発を目的としている。そのため本年度は、申請者らが新規に分離した2種のファージKSP90とKSP100の溶菌酵素遺伝子を特定するため、これらのファージのゲノム全塩基配列を解読しその解析を行なった。KSP90のゲノム塩基配列は約160kbpで173個のORF(open reading frame)の存在が予測された。KSP100は主要頭部タンパク質の推定アミノ酸配列からT4-like属ファージであると予想された。しかしKSP100ゲノム塩基配列は、全体として同属の他のファージとかなり異なっている事も明らかとなった。データベースを利用した推定アミノ酸配列の相同性解析により、ファージ粒子の構造タンパク質の遺伝子群やファージのDNA合成遺伝子群等を推定することができ、さらに尾部先端溶菌酵素遺伝子(531 aa)を推定することができた。一方、KSP100ゲノムの全塩基配列は、約70kbpで88個のORFの存在が予想された。本ファージは新規性がかなり高く、強い相同性を有するファージは存在しなかった。しかし、大腸菌ファージphiEco32やサルモネラファージ7-11と進化的に関係していると予想され、遺伝子順序および推定アミノ酸配列の弱い類似性から、ファージ構造タンパク質やDNA合成関連遺伝子を推定できた。KSP100の溶菌酵素遺伝子を他ファージの溶菌酵素アミノ酸配列との類似性により検出することは困難であったが、ファージphiEco32、7-11ゲノムにおける遺伝子の順序との類似性により、推定尾繊維タンパク質遺伝子の下流遺伝子がKSP100の溶菌酵素遺伝子と推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定していた通り、申請者らが独自に分離したファージKSP90とKSP100のゲノム全塩基配列の解読が終了した。しかし、ゲノム解読とアノテーションの結果、KSP90とKSP100は、当初予想していたよりもかなり新規性の高いファージある事が明らかになり、溶菌酵素遺伝子の推定に、相同性検索のみならず遺伝子シンテニーをも考慮する必要があり、当初粗相より若干時間を要することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では、外膜透過領域を有する融合溶菌酵素を作成し、セラチア菌への溶菌活性を検討する。(1)昨年度の研究で溶菌酵素遺伝子が推定されたファージKSP90, KSP100、および大腸菌ファージP2との類縁性からすでに溶菌酵素遺伝子が予想されているKSP20について、それらの遺伝子をPCRで増幅後、ベクタープラスミドにクローニングし、セラチア菌を含有したザイモグラフにより、溶菌活性を確認する。(2)C100遺伝子を合成しプラスミドベクターにクローニングする。このC100遺伝子産物を大腸菌、セラチア菌に作用させ、外膜への影響を検討する。(3)上記溶菌酵素遺伝子を、C100遺伝子の下流に塩基読み枠が合致するように融合させ、さらにC-末端側にHisタグを結合させる。(4)上記融合C100-溶菌酵素-Hisタグ融合タンパク質を大腸菌で発現後、Coセファロースカラムで精製し、これをセラチア菌に作用させ、溶菌活性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の計画に基づく経費執行について、4月に支払いすべき経費が残っているため、次年度使用額が存在するように見えるが、実際には、全額を執行予定である。そのため、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
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Research Products
(14 results)