2012 Fiscal Year Research-status Report
ファージ溶菌酵素を利用するセラチア菌感染症に対する新制御法の開発
Project/Area Number |
23659524
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
松下 憲司 高知大学, 教育研究医療学系, 講師 (20332835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究医療学系, 准教授 (00190439)
大畑 雅典 高知大学, 教育研究医療学系, 教授 (50263976)
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Keywords | バクテリオファージ / 溶菌酵素 / ファージ療法 / セラチア菌 / グラム陰性菌 / 外膜 |
Research Abstract |
本研究は、セラチア菌による感染症をファージ由来溶菌酵素を利用して制御することを最終目標としている。セラチア菌はグラム陰性菌であり、ファージ溶菌酵素を外部から作用させた場合、外膜の存在のゆえに溶菌酵素の基質であるペプチドグリカンに接触することができない。そのためセラチア菌ファージの溶菌酵素の菌種特異的切断ドメインとBacillus amyloliquefaciensファージMorita2001の溶菌酵素由来の外膜透過に関係すると予想されるC末端側ドメイン配列等との融合により、グラム陰性菌の外膜を通過可能でかつ菌種特異的な溶菌活性を有する融合酵素を作成することを目的としている。これまで2種のセラチア菌ファージKSP90, KSP100のゲノム塩基配列を次世代DNAシークエンサーで解読し、溶菌酵素をコードしていると予想される遺伝子群を絞り込んでいる。本研究では、さらに当該融合溶菌酵素を作成するためファージMorita2001の溶菌酵素の外膜透過性に関係すると予想される領域(C100)の詳細な解析を行なった。その結果、ファージMorita2001のC100と酷似するアミノ酸配列がバチルス属菌ファージphi29, PZA, B103, Nf等の溶菌酵素のC末端側にも存在することが明らかになった。これらのファージはすべて形態学的には短い尾部を有するfamily Podoviridaeに属するファージであるため、このタイプのファージが保有する溶菌酵素はグラム陰性菌の外膜を透過する機能を有している可能性が示唆された。またこれらのファージの溶菌酵素の推定外膜透過領域のC末端約100アミノ酸配列領域には、細胞膜合成に関与すると考えられるLysEドメインが存在し、このドメインが外膜通過に関係している可能性が示唆された。本研究を通し多様な融合型溶菌酵素の有用性を検討することが可能になったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を通して、外膜透過型の溶菌酵素を保有すバクテリオファージは、Morita2001にとどまらずグラム陽性菌のfamily Podoviridaeに属するものに広く分布する可能性が示された。これにより、セラチア菌ファージ由来の溶菌酵素に融合させる外膜通過ドメインのアミノ酸配列の選択肢が広がったと考えられ、外膜透過能を比較検討し、最も効率のよい配列を検討することが可能になった。また、外膜透過領域に膜合成ドメインに2つの連続したアミノ酸配列が存在することが確認され、このアミノ配列の数を変更する事により外膜透過能が改善される可能性が示唆された。これらに基づき、最終年度において多様な融合型溶菌酵素研究への道が開けたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、セラチア菌ファージの溶菌酵素と種々の外膜透過領域を融合させ、セラチア菌特異的に溶菌可能な融合酵素を完成させることを目標とする。 (1)セラチア菌ファージ(KSP20,KSP90, KSP100および新たに追加分離した2株のセラチア菌ファージ等)の溶菌酵素遺伝子の3’末端側に各種ファージの外膜通過領域の塩基配列を融合させ、大腸菌中で大量発現させ、Coセファロースカラムで1段階精製を行ない、融合酵素を調製する。 (2)またセラチア菌ファージの溶菌酵素のC末端側に、外膜通過ドメインに存在する重複配列を倍加させ、セラチア菌溶菌活性への影響を検討する。 (3)作成された融合酵素について、補酵素等の活性に影響を与える因子をin vitroで検討する。 (4)至適溶菌酵素反応系に動物(マウス、カイコ等)の体液を添加し、溶菌活性を維持している融合酵素を選択する。 (5)これらの融合溶菌酵素を用いて、セラチア菌の動物感染モデルにおいて、感染制御活性を示すか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
セラチア菌ファージの溶菌酵素を外膜透過ドメインと融合させるために、それらの融合遺伝子を大腸菌で大量発現させ、精製融合酵素を調製する。さらに、その感染抑制効果を実験動物を使用して検討する。そのため、細菌培養用の培地、PCR用試薬類、DNA塩基配列解析用試薬、タンパク質精製用カラム充填剤などの購入、外膜透過アミノ酸配列用DNAの合成費用、および実験動物(マウス、カイコ)の購入に、本研究費を使用する予定である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Pseudomonas aeruginosa keratitis in mice: effects of topical bacteriophage KPP12 administration.2012
Author(s)
Fukuda K, Ishida W, Uchiyama J, Rashel M, Kato S, Morita T, Muraoka A, Sumi T, Matsuzaki S, Daibata M, Fukushima A
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Journal Title
PLoS One
Volume: 7
Pages: e47742
DOI
Peer Reviewed
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