2011 Fiscal Year Research-status Report
網羅的スクリーニングによる肺炎クラミジア抗原の分子探索とワクチン開発の展開
Project/Area Number |
23659528
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
尾内 一信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80351899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 文雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40153077)
三浦 公志郎 川崎医科大学, 医学部, 講師 (30284243)
簗取 いずみ 川崎医科大学, 医学部, 助教 (40454847)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺炎クラミジア / 血清学的診断法 / ワクチン |
Research Abstract |
本邦で最も普及している肺炎クラミジア感染の診断方法はELISA法(ヒタザイムC.ニューモニエTM)である。現在、市販されているELISAキットでは、肺炎クラミジア抗原として、基本小体由来の外膜蛋白質やLPSが利用されている。しかし、抗原の違いにより、擬陽性やキット間で診断結果に矛盾を生じることがある。本研究では肺炎クラミジアに対する新規特異抗原の特定を目的として、肺炎クラミジアJ138株全1029遺伝子のうち455遺伝子を標的に網羅的スクリーニングを行った。Saccharomyces cerevisiaeにGFP標識した組換え体肺炎クラミジア蛋白質を発現させ、抽出蛋白質を抗原として用いた。一次抗体として肺炎クラミジア初感染患者血清(8名)、二次抗体としてHRP標識抗ヒト免疫グロブリン(anti-IgA, IgG, IgM, IgA+G+M)抗体を用いてウェスタンブロット解析を行った。その結果、肺炎クラミジア抗原として患者血清によって認識される合計58クローンを見出した。さらにこの58クローンについて、各患者血清を用いて詳細にウェスタンブロット解析を行った結果、各免疫グロブリン・アイソタイプで特異的、かつ高頻度に認識されるクローンが数種類あることを明らかにした。これらの抗原は肺炎クラミジア感染のための新規血清学的診断法の開発のみならず、今後のワクチン開発のためにも有益な情報になるものと期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の当初の計画では、肺炎クラミジア機能未知蛋白質約500個に対して、肺炎クラミジア小児初感染患者およびCOPDを含む成人患者血清が認識する肺炎クラミジア分子の網羅的探索を行うことを予定していた。実際に、これらの網羅的解析を終え、58個の分子を同定することができた。よってほぼ計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は次の2項目について研究をすすめていく。1.抗体の作製平成23年度に見出した、肺炎クラミジア患者血清によって認識される58個の肺炎クラミジア蛋白質のうち、特に強い抗原性を認めた3分子について、特異的抗体の作製を試みる。これら3つの分子に対する抗体は、肺炎クラミジアの感染を抑制することができる可能性がある。抗体作製に成功した後、肺炎クラミジアを株化ヒト上皮系細胞に感染させる際に、この抗体による感染抑制効果の有無を判定する。2.血清学的診断法開発への応用初年度に見出した患者血清と特異的に反応する肺炎クラミジア分子58個のうち、特に多くの患者で認識された蛋白質の大量精製を試みる。肺炎クラミジア蛋白質を大腸菌もしくは酵母で発現させるとその毒性の高さゆえに、十分な量を精製できない可能性が高い。そこで、様々な欠損株を作製し、患者血清が認識する十分な領域の蛋白質の領域を同定する。肺炎クラミジア蛋白質の全長発現が困難な分子については、抗体認識領域を決定後にその領域について蛋白質の大量精製を行う。これらの蛋白質を用いて、肺炎クラミジア血清学的診断への応用のために条件の最適化を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、成人の肺炎クラミジア患者血清を用いた解析を行うために理化学研究所(横浜)に2回以上出向することを予定していた。しかし、計画よりも解析が順調にすすみ、1回の出向で十分な成果が得られた。本年度は患者血清が高頻度に認識する肺炎クラミジア蛋白質の大量精製を行い、血清学的診断への応用のため条件の最適化を図る。その際、成人患者血清を用いた検討を行うにあたって、本年度も理化学研究所へ出向する必要があり、昨年度請求の残額をその旅費として使用する予定である。さらに、本年度請求する研究費は、主に大腸菌・酵母培養関連の試薬として計上している。これらは、大腸菌もしくは酵母での肺炎クラミジア蛋白質を大量に精製するために必要であり、本年度の主な研究を進めていくうえで必要である。さらに抗体を作製するために、動物の購入・飼育費が必要であり、これらも計上している。
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