2012 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞由来神経細胞を用いたウイルスベクターによる脊髄性筋萎縮症の治療
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23659530
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
荒川 正行 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所・基盤生物研究部, 研究員 (90398868)
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Keywords | ポリオウイルス / RNAウイルスベクター / 運動神経細胞 / 脊髄性筋萎縮症 |
Research Abstract |
本研究は、ポリオウイルス(PV)が神経分化誘導過程において感染・複製するメカニズムを解析し、その解析結果を基に、PVゲノム内に外来遺伝子を搭載した外来遺伝子発現PVベクターを作製し、このベクターを用いて脊髄性筋萎縮症(SMA)の新規治療法を確立することを目的としている。本年度は、昨年度に引き続きPVの神経分化過程における感染・複製のメカニズムを解析するために、ヒトiPS細胞を用いて神経分化誘導を行った。ヒトiPS細胞コロニーを分離・回収し、そのコロニーを神経分化用培地1~3に段階的に換え分化誘導を行った。分化誘導30日において神経細胞マーカーであるβIII-tubulinの免疫組織化学染色により神経分化能を評価した。その結果、ヒトiPS細胞由来βIII-tubulin陽性細胞は80%以上であることが明らかとなった。この分化能は、ヒトiPS細胞由来の神経細胞として用いることが可能であると評価し、次にこれら神経様細胞に対して、昨年度に作製したPVゲノムの構造蛋白質をコードする領域を欠失した領域にGreen Fluorescent Protein(GFP)を搭載したPV欠陥干渉(DI)粒子を感染させたところ、ヒトiPS細胞由来神経様細胞内にベクター由来のGFP陽性細胞を確認した。このヒトiPS細胞由来神経様細胞はPVにおける感染・複製のメカニズムを解析する新たなツールであると考えて研究を進めている。 同時に、SMAの新規治療法を目指したPVベクターの可能性について研究を進めている。現在、昨年度に作製したGFPをタグとして用いた下流にSurvival of motor neuron 1 mRNAを搭載したPV DI 粒子をHeLa細胞、神経芽腫SK-N-SH細胞、Type I SMA患者由来細胞に感染させ、導入したGFP-SMN蛋白質の発現及びその機能解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、神経分化誘導過程におけるポリオウイルス(PV)の感染・複製メカニズムを解析し、その解析結果を基に、PVゲノム内に脊髄性筋萎縮症(SMA)の原因遺伝子であるsurvival of motor neuron 1を搭載した発現PVベクターを作製し、このベクターを用いたSMAの新規治療法を確立することを目的としている。 本年度は、昨年度に引き続きPVの神経分化過程におけるPVの感染・複製メカニズムを解析するために、ヒトiPS細胞を用いて神経分化誘導を行った。ヒトiPS細胞を神経分化用培地1~3に段階的に換え分化誘導を行った。分化誘導30日において神経細胞マーカーであるβIII-tubulinの免疫組織化学染色により神経分化能を評価した。その結果、ヒトiPS細胞由来βIII-tubulin陽性細胞は80%以上であることが明らかとなり研究を遂行するに価する結果を得た。次にこれら神経様細胞に対して、昨年度に作製したPVゲノムの構造蛋白質をコードする領域を欠失した領域にGreen Fluorescent Protein(GFP)を搭載したPV欠陥干渉(DI)粒子を感染させたところ、ヒトiPS細胞由来神経様細胞内にベクター由来のGFP陽性細胞を確認した。このヒトiPS細胞由来神経様細胞はPVの感染・複製のメカニズムを解析する新たな系を確立した。 同時に、SMAの新規治療法を目指したPVベクターの可能性について研究を進めている。現在、GFPをタグした領域の下流にSurvival of motor neuron (SMN) 1 mRNAを搭載したPV DI 粒子をHeLa細胞、神経芽腫SK-N-SH細胞、Type I SMA患者由来線維芽細胞に感染させ、導入したGFP-SMN蛋白質の発現及びその機能解析を行っている。研究全般的に順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、脊髄性筋萎縮症(SMA)の新規治療法を目指したポリオウイルス(PV)ベクターの可能性について研究を進めている。作製されたGFPをタグした領域の下流にSurvival of motor neuron (SMN) 1 mRNAを搭載したPV DI 粒子をHeLa細胞、神経芽腫SK-N-SH細胞、Type I SMA患者由来線維芽細胞に感染させ、導入したGFP-SMN蛋白質の発現及びその機能解析を行っている。さらに、外来遺伝子搭載用PVベクターの病原性の軽減を目指してベクターを改変した最適化を行う予定である。 1)PVベクターの病原性軽減:PVのinfectious clone(pOM1)を用いてPVゲノム内のウイルス構造蛋白質に関わるP1領域(VP1, VP2, VP3, VP4)、病原性、ウイルスの複製やプロセッシングに関わるP2領域(2A, 2B, 2C)及びP3領域(3A, 3B, 3C, 3D)の各11領域個々の発現プラスミドを作製する。 2)作製された各領域発現プラスミドをヒト細胞株にトランスフェクションし、導入された蛋白質発現、細胞内局在、細胞毒性を網羅的に調べる。 3)各領域を発現させた細胞による細胞毒性等の解析データから、細胞毒性を惹起するゲノム領域の遺伝子欠失または変異を導入し、各種ヒト細胞株を用いて細胞毒性の軽減を評価する。その結果より改変したPVベクター内に外来遺伝子を導入し、標的遺伝子を搭載したPV粒子を作製する。 4)作製された外来遺伝子搭載PV粒子の複製能について評価し、さらに、この粒子を用いて脊髄性筋萎縮症患者由来線維芽細胞及びiPS細胞由来神経細胞に導入した外来遺伝子由来の蛋白質発現をウエスタンブロット法により調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は引き続きヒトiPS細胞の培養維持のための培地、サプリメントの購入、神経分化用培地作製のための神経分化誘導因子、サプリメントの購入、FBS、FCS等の血清の購入、免疫染色及びウエスタンブロット用の抗体等の購入、プラスミド作製やシーケンス用試薬、培養関連消耗品等の予算となっている。また、国内外における研究成果発表の旅費及び論文発表等に使用する計画となっている。
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