2011 Fiscal Year Research-status Report
新生児呼吸窮迫症候群における肺胞上皮Aktシグナルの病態生理学的意義の解明
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23659536
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩島 一朗 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (90376377)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 発生・分化 |
Research Abstract |
糖尿病合併妊娠における周産期合併症のリスクが高いことはよく知られている。特に糖尿病合併妊娠では、しばしば新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome: RDS)を呈し、無治療では主たる死因となる。RDSの原因は母体高血糖により、胎児側の反応性高インスリン血症が引き起こされることが原因と考えられるが、その詳細な病態生理は明らかでない。今回我々は2型肺胞上皮細胞特異的にAkt遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(LE-Akt TGマウス)を作成したところ、帝王切開にて早期晩出した胎児においてRDSときわめて類似した表現型を呈することを見出した。本研究の目的は、このマウスモデルを用いてDSの発症機構を明らかにすることである。平成23年度は以下の2点について検討した。(1) LE-Akt TGマウスの表現型をさらに詳細に解析する。(2) LE-Akt TGマウス肺における血管新生の変化を検討するLE-Akt TGマウスでは肺胞空気含有量の減少と肺胞壁厚の増大がみとめられ組織学的にもRDSに類似した表現型を呈していた。また、CC-10/SP-C陽性の肺胞上皮幹細胞が増加しており、肺胞上皮細胞の分化成熟が障害されていることが示唆された。さらに肺胞における毛細血管密度の低下とVEGF、HIF-2の発現量減少がみられ、過剰なインスリンシグナルにより血管新生が障害されているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定した項目についてはほぼ解析が終了しており、計画はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Aktの下流にあるシグナル分子mTORがRDS発症において重要な役割を有することが明らかになれば、rapamycinなどのmTOR阻害薬がRDSの新規治療法となりうる。そこで平成24年度は以下の点について検討する。(3) LE-Akt TGマウスのRDS発症におけるAkt-mTOR経路の関与を明らかにする(3)-1:LE-Akt TGマウスにおいてmTORを阻害し、RDSの表現型に対する影響を検討する(3)-2:LE-Akt TGマウスにおいてmTORを活性化し、RDSの表現型に対する影響を検討する(3)-3:培養肺上皮細胞を用いて、インスリンのVEGF, HIF-2αの発現量に対する影響がmTORを阻害することによりどのように変化するか検討する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も研究費は物品費(マウス購入飼育費・分子生物学的解析消耗品・組織学的解析消耗品)として使用する。
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