2012 Fiscal Year Annual Research Report
新生児呼吸窮迫症候群における肺胞上皮Aktシグナルの病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
23659536
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
塩島 一朗 関西医科大学, 医学部, 教授 (90376377)
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Keywords | シグナル伝達 / 発生・分化 |
Research Abstract |
糖尿病合併妊娠における周産期合併症のリスクが高いことはよく知られている。特に糖尿病合併妊娠では、しばしば新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome: RDS)を呈し、無治療では主たる死因となる。RDSの原因は母体高血糖により、胎児側の反応性高インスリン血症が引き起こされることが原因と考えられるが、その詳細な病態生理は明らかでない。我々は2型肺胞上皮細胞特異的にAkt遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(LE-Akt TGマウス)を作成し、RDSときわめて類似した表現型を呈することを見出した。このマウスモデルを用いてRDSの発症機構を明らかにすることを目的に、以下の3点について検討をおこなった。 (1) LE-Akt TGマウスの表現型をさらに詳細に解析する (2) LE-Akt TGマウス肺における血管新生の変化を検討する (3) LE-Akt TGマウスのRDS発症におけるAkt-mTOR経路の関与を明らかにする LE-Akt TGマウスでは肺胞空気含有量の減少と肺胞壁厚の増大がみとめられ組織学的にもRDSに類似した表現型を呈していた。また、肺胞における毛細血管密度の低下とVEGF、HIF-2の発現量減少がみられ、過剰なインスリンシグナルにより血管新生が障害されているものと考えられた。さらに、LE-Aktマウスにおいてラパマイシンを投与したところ、VEGF、HIF-2の発現量が増加し、RDSの病態が改善されることが明らかになった。培養肺上皮細胞でもインスリン投与によりHIF-2転写活性は減弱し、ラパマイシン投与により逆に増強された。以上の結果は、胎児期における過剰なインスリンシグナル活性化が、mTOR依存性にHIF-2の転写活性を抑制することにより、新生児呼吸窮迫症候群の病態形成に関与することを示唆するものと考えられた。
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