2012 Fiscal Year Annual Research Report
TOFーSIMS(飛行時間型質量分析)顕微鏡を用いた角質バリア機能可視化法の開発
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23659555
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70335256)
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Keywords | イメージング / 皮膚バリア / アトピー性皮膚炎 |
Research Abstract |
アトピー性皮膚炎の要因として角質バリア障害が注目されている。だが、角質のバリア障害を観察評価する手段は限られており、角層内の物質分布を観察する方法も同じく限られている。本研究では、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)顕微鏡を用い、角質内の物質分布の新しい可視化方法、角質バリア機能の新しい可視化方法を開発した。 TOF-SIMSにより観察するのに適した皮膚サンプルの作成方法化、観察手法の最適化を行った。マウス尻尾皮膚をTOF-SIMSを用いて観察し、角質と生細胞層を分けて観察できるようになった。角層はセラミドの分解産物を多く含み、Naに富む領域として同定できた。また、フィラグリンの分解産物であるアルギニンの角層内分布を可視化することに成功した。興味深いことに、アルギニンは角質の中層に集積しており、角質層は、K-high, Arginine-lowな上層、K-low, Arginine-highな中層、K-low, Arginine-lowな下層、の3つの層に分けられることが明らかとなった。上層を水で洗うと、上層に含まれるNa, Kは洗い流された。また六価クロムは上層には容易に浸透するが、中層には浸透しなかった。以上より、角質上層はさまざまな低分子が容易に出入りするスポンジのような構造を取っていることが示唆された。また角質中層はバリアとして機能していた。次に三価クロムの浸透性を評価したところ、三価クロムは角質中層に浸透してアルギニンを洗い流したが、角質下層には浸透しなかった。以上より、角質の中層と下層はそれぞれ異なる物理的性質を持ったバリアとして働いていることが明らかとなった。質量分析顕微鏡を用いることで、これまで知りえなかった角質層の三層構造を明らかにした。
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Research Products
(6 results)