2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会知能の客観的評価を実現する心理検査バッテリーの開発
Project/Area Number |
23659558
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山末 英典 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80436493)
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Keywords | 対人行動 / 社会認知 / 社会心理 / 自閉症 / 広汎性発達障害 / MRI / functional MRI / MR-spectroscopy |
Research Abstract |
本課題では、1)オリジナルの社会知能の検査バッテリー(他者の友好性の判断、共感、こころの理論、不公平性回避、社会的文脈での表情判断)の作成、2)自閉症スペクトラム障害(ASD)当事者40名と定型発達者(TD)40名からの新旧の社会知能検査バッテリーでのデータ収集、3)同一のASD当事者40名とTD対照者20名からのマルチモダリティMRIデータ解析、4)オリジナルの社会知能検査バッテリーおよびそのMRI指標をアウトカム指標としてオキシトシン噴霧剤の単回投与(40症例)および長期投与(20症例)の効果をASD当事者で検証する臨床試験、について行い解析および論文投稿準備を進めている。以下の研究成果については既に結果を確定して論文発表した。 まずTD群を対象に、オリジナルの社会知能検査の一部を実施中のfMRIを解析し、表情や声色を主に活用して他者の友好性を判断する場合には後方部の背内側前頭前野をハブとするネットワークが、言葉の内容を主に活用する場合では右半球の腹側の後部下前頭回をハブとする異なるネットワークが賦活されることを初めて示した。一方で、前方部の背内側前頭前野はこれらのネットワークを橋渡しし、どちらのハブ領域よりも早く賦活され、この部位がどちらかのネットワークを選択的に動員し、非言語的な情報と言語的な情報が食い違う際の複雑な他者判断を瞬時に効率よく成立させることが示唆された(SCAN, 2013)。一方で、ASD当事者では、他者の友好性を判断する際に顔や声の表情を重視することが有意に少なく、その際に内側前頭前野の賦活が有意に弱いことが重要であることを初めて示した。さらにこの内側前頭前野の活動が減弱しているほど臨床的に観察されたコミュニケーションの障害が重いことを示した(PLoS ONE, 2012)。
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