2011 Fiscal Year Research-status Report
デジタル通信理論を応用した新しいタギングMRI撮像法の開発
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23659585
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 哲也 京都大学, 情報学研究科, 教授 (00209561)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 晃 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | MRI / タギング / デジタル通信理論 / 運動解析法 |
Research Abstract |
本研究では、心臓の壁運動解析に用いられるタギングMRI画像において、明暗を繰り返すタグを0,1の二値からなる数列ととらえることにより、二値化情報を扱うデジタル通信技術の画像解析への適用を可能にし、画素値に依存しない処理によって革新的な壁運動解析法を確立することを目的として研究に着手した。研究初年度は、タギングMRIパルスシーケンスの臨床用MRI装置への実装とシミュレーションによるタグパターンの最適化設計を行った。デジタル画像であるMRI画像の画素サイズに等しい幅のタグを利用することが本研究構想の基本概念となるが、パルスシーケンスの実装では、タグの明暗部の両者が画素サイズに等しい幅を持つものや一方が整数倍の幅を持つものなど、数種類のシーケンスを完成した。タグ幅が画素サイズに等しい場合、画素とタグの相対的な位置関係を精密に制御することが必須となるが、位置関係の検出を3回程度の試行スキャンで実現する方法を考案し、総当たり法により10回程度の試行が必要であった研究当初に比して大幅に効率化することに成功した。さらに、本研究の背景となっている基本原理では異なるタグパターンによる複数の撮像が必要で、臨床への応用には致命的な欠点であった。これに対する打開策も本年度の大きな研究課題であったが、タグの空間的展開を工夫することにより概ね解決し、基本的なタグパターンを臨床用MRI装置に実装する準備が整った。タグパターンの最適化設計を行う研究項目では、タグの2次元展開に関するシミュレーションを行い、タグを実際に発生させることが可能で、さらに信号解析を行う際にも効率的なタグパターンを2種類、提案するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の背景となっている着想は既に特許出願中のものであり、研究を開始した時点で基本原理は概ね固まっていた。本研究では、その実用化を視野に入れ、基本原理を実証するとともに臨床に応用する際に問題となる点を解決することが大きな目標であり、研究の基盤となるタギングMRIパルスシーケンスの臨床用MRI装置への実装は容易であった。実際の撮影実験を重ねて研究を進める過程で、撮影したタギングMRI画像上に現れる新たな問題点が明らかとなったが、その多くは予備的な実験によりある程度予想できたものに留まっていた。タグを2次元展開する際、予備実験ではMRI画像の読み出し方向のみに与えていたタグを位相エンコード方向にも重畳したが、位相エンコード方向ではタグのコントラストが不鮮明になるという問題が生じ、その原因解明に3ヶ月程度の期間を要したが、これ以外は概ね順調に研究が進行した。初年度の課題として挙げていたタグパタンの位置を微調整するための方法の開発は完了し、また、MRI装置に実装可能で自動追跡も容易なタグパタンの最適化設計についても2種類のパターンを提案でき、計画通りの進捗といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は概ね計画通りに研究が進展しており、24年度についても当初の計画通り研究を進める予定である。具体的には、研究代表者が担当するタギングMRIパルスシーケンスの実装では、初年度に作成を開始した運動ファントムを用い、実際の撮影を行う。特に、MRI画像における各画素とタグパターンとの相対的な位置関係に関する判定技術の検証を通じて、一般ユーザが撮影を実施できるようパルスシーケンスを整備し、撮影パラメタのの単純かを図る。研究分担者が担当するタグパターンの最適化およびタグ画像解析では、タグパターンを2次元に展開する場合、2方向のタグの交点およびその周囲でタグの明暗部が0, 1の2値とはならず中間的な信号強度となる画素が発生するという問題点が生じている。これはスピンの横磁化の影響によるものであることが判明しているが、タグのprofileをより先鋭化することにより改良を目指す予定である。また、タグ位置の判定をはじめとした画像解析を行うためのソフトウェア開発も進める。以上のような計画で、最終年度末には、1回の撮像で画素単位の運動解析が可能な革新的なタギングMRI撮像法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定のデータ解析用コンピュータは、本研究で開発する新たなタグ位置の判定ソフトウェアを実装し、本法に専用の画像解析システムとする。また、本研究の基礎となっている基本原理では画素単位で運動解析を行うため、撮影対象である心臓壁の輪郭を抽出する必要は無く、自動解析が可能であるが、実際には、運動に伴うアーティファクトなどにより輪郭部分では正確な判定ができない恐れがある。このような問題点を確認するためには高精度な制御が可能な運動ファントムを用いた検証が必須であり、今年度も引き続き運動ファントムの駆動装置を改良を進める。
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