2012 Fiscal Year Annual Research Report
53BP1をターゲットとしたDNA損傷修復の可視化と癌治療戦略
Project/Area Number |
23659587
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
栗政 明弘 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80343276)
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Keywords | DNA修復 / 細胞周期 / 抗がん剤 / 放射線 |
Research Abstract |
細胞に起きるDNA損傷とその修復過程は、細胞の癌化の過程で重要な役割を果たすとともに、PARP阻害剤を始めとする癌化学療法や放射線治療増感剤のターゲットになっている。我々は放射線損傷部位に集積する53BP1の性質を利用し、細胞内に安定で発現できる53BP1-GFP融合タンパク質を用いたDNA損傷を検出するバイオセンサーを開発した。具体的には、緑色蛍光タンパク質GFPと融合した変異53BP1タンパク質と、赤色蛍光タンパク質DsRedと融合させたPCNAを共発現するU2OS細胞(U2RDP-53BP-21)を用いることで、細胞周期とDNA2本鎖切断損傷の生成・修復過程を可視化し、それらを定量解析することが可能となった。細胞を生きたままタイムラプス観察を行うことで、細胞周期の変化を定量化し、またDNA2本鎖切断損傷の検出が可能となり、これらのバイオセンサーが機能することが実証された。 さらに、DNA損傷を引き起こす薬剤のうち、細胞周期に依存せずにDNA2本鎖切断損傷を引き起こすNeocarzinostatin(NCS)、および細胞周期の特にS期において特異的にDNA2本鎖切断損傷を引き起こすTopoisomeraseI阻害剤であるCamptothecin(CTP)、さらにはTopoisomeraseII阻害剤であるNK314を投与し、細胞周期依存的に生じたDNA損傷の生成・修復過程を観察した。自然条件下で認められる細胞周期のプロファイルと比較するとともに、これらの薬剤による引き起こされる細胞周期の移行、細胞周期チェックポイントとDNA修復の関連性を明らかすることに成功した。 一方、53BP1-GFP融合タンパク質を発現するマウス個体の作出に成功し、その継代維持を行っている。今後マウス由来の組織を用いた観察法を樹立し、組織でのDNA損傷の動態を解明する基盤を確立していく。
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