2012 Fiscal Year Research-status Report
新規血管新生阻害物質DBP-mafの癌治療への応用
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23659611
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松浦 成昭 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70190402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 誠司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90467506)
濱田 吉之輔 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10362683)
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Keywords | 血管新生 / マクロファージ / がん治療 |
Research Abstract |
本研究は新規の血管新生阻害物質DBP-maf(Vitamin D binding protein-macrophage activating factor)による癌の治療を目的とした研究である。DBP-mafは血管新生阻害剤として開発されたが、名前の通り、マクロファージの活性化作用も認められ、抗腫瘍効果に寄与しているという報告も見られる。そこで今年度はマクロファージに対する作用と、in vivoの効果を検討した。マウス腹腔からマクロファージを分離し、DBP-maf 1ng/mlで刺激して細胞表面抗原の発現レベルをフローサイトメトリーで検討した。その結果、CD11b、CD18、CD105の発現レベルの増加が認められたが、CD11a、CD14の発現レベルは変化が見られなかった。次に、家兎血清でオプソニン化した羊赤血球に対する貪食能を検討したところ、コントロールに比べて約30%の貪食能の亢進が認められた。in vivoの実験として、4週齢ヌードマウスに肝癌細胞株PLC/PRF/5細胞を皮下接種し、腫瘍体積が100mm3の時点からDBP-maf 4ng/mlを連日投与した(コントロールはPBSを投与)。投与3週間後、コントロール群では腫瘍の体積は1855mm3と増大を示したのに対して、DBP-maf投与群では151mm3と腫瘍の増殖は著明に抑制された。以上の結果から、DBP-mafは血管新生阻害作用に加えて、マクロファージ活性化作用も有すること、またin vivoにおける腫瘍の増殖を抑制することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DBP-mafは強力な内因性の血管新生阻害物質であるが、名前の通り、マクロファージ活性化作用も示すことが報告されている。DBP-mafの抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにする上で、マクロファージに対する作用の研究も欠かせないと考え、今年度はその点と計画されていたin vivoにおける腫瘍に対するDBP-mafの作用の検討を行った。研究結果としてマクロファージに対する活性化作用が得られ、またヌードマウスモデルで腫瘍の増殖を抑制する結果が示された。組織学的な解析が十分に行えなかったが、今年度の研究成果としてはおおむね順調に経過していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に明らかになったin vivoにおける腫瘍増殖の抑制のメカニズムを病理組織学的、免疫組織学的に検討する必要がある。また、血管新生阻害作用に関して、これまでin vitroの実験が中心であったので、in vivoの血管新生評価系(Aorta ring assay、DASアッセイ、マトリゲル・プラークアッセイ)におけるDBP-mafの作用の検討も行う必要がある。今年度、肝癌細胞株を用いたin vivo実験を行ったが、種々の癌細胞株を用いてDBP-mafの抗腫瘍効果の検討も行う必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は血管新生阻害評価アッセイおよび抗腫瘍効果の検討のためにin vivoの実験も実施するので、実験用動物の購入に研究費を使用する必要がある。また、分子メカニズムの検討のために、抗体、分子生物学的検討に必要な試薬、血管内皮細胞・がん細胞などの細胞株およびその培養に必要な消耗品、病理学的・生化学的検討に必要なガラス器具などの消耗品の購入に研究費を使用する。以上の消耗品費として研究費をできるだけ使用したいので、日本癌学会を初めとする学会へ参加しての学会発表、情報収集、国内外の調査研究はできるだけおさえたい。研究補助などの謝金、会議費等に一部を使用する予定である。
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