2011 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞の細胞周期離脱・再進入を標的とした治療法開発のためのG0癌細胞モデルの作成
Project/Area Number |
23659616
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片野 光男 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10145203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 賢二 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 教授 (00315061)
大西 秀哉 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30553276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 細胞周期離脱 / 細胞周期再侵入 / G0期 / がん細胞 / 治療 |
Research Abstract |
現在の分子標的薬剤を含む抗癌剤開発は、癌の旺盛な増殖機序を標的として進められているが、癌組織を構成する癌細胞の多くは、増殖を低下させたり停止した状態にある。したがって、本研究の目的は、新たな視点に立った癌治療法開発領域を創成する目的で、「癌細胞の離脱および再進入の機序を解析するための長期生存G0期癌細胞モデルを作成」することである。以下、本年度の計画にそって成果を記載する。1)In vitro G0細胞作製:膵癌細胞を標的細胞とし、細胞周期進行に働いている遺伝子を中心に、ノックダウンする系により、G0/G1で細胞周期が停止する細胞を作成する。結果:膵癌細胞を中心に、種々の増殖シグナル系、形態形成シグナル系およびがん微小環境を中心にG0/G1停止長期生存可能な細胞株樹立を試み、次の二つの興味ある結果を得た。1)Notchシグナル構成分子の一つであるPresenilin2(PS2)のノックダウンにより細胞周期がアポトーシスを誘導せずにG0/G1期に停止する。結果として、PS2ノックダウン膵癌細胞はG2M期作用薬剤の感受性を著しく低下させる。この現象は他の膵がん細胞にても再現された。2)同様に、膵癌細胞を低酸素環境(1%CO2)に置くと増殖スピードが低下し、Hedgehogシグナル構成分子の一つであるSmoの活性化が同時に誘導される。Smo発現をノックダウンすることで細胞周期がG0/G1へ集積し、S期感受性薬剤に抵抗性になる。これは、現在臨床試験にあるHedgehogシグナル阻害剤開発において注意すべき新情報である。2)In vivo G0細胞モデルの作成:作成した候補G0細胞を免疫不全マウスに移植し、次の三つのモデル作成を試みる。結果:上記2つの細胞の株化を試みているが、移植可能な細胞株樹立に難渋しており移植実験は実施不能の状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のように、研究計画の柱は2つであるが、1)In vitro G0細胞作製に関しては、二つのシグナル経路(Notchシグナル経路およびHedgehogシグナル経路)と候補分子(PS2とSmo)を見つけだすことができた。しかし、これらはノックダウン手技により再現可能な現象であり、マウス移植実験が可能な長期安定ノックダウン細胞株作成に難渋しており、2)In vivo G0細胞モデルの作成に関する計画が全く進行しない状況である。これらを総合的に判断すると、最終目標を考えると達成度は低いと判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)長期間培養により増殖スピードの低下あるいは停止した細胞を誘導し、マイクロアレイなどを利用し、基本となる長期培養株作成のための候補シグナル系や候補分子の検索を継続する。(2)現在見出した候補分子(PS2およびSmo)の発現減弱あるいは欠損細胞をセルソーターを使用して分取し、これを親細胞として長期安定培養株の樹立を試みる。(3)PS2およびSmoの発現を制御(抑制)しているシグナル系を同定し、このシグナル関連分子の強制発現系(遺伝子導入)を用いて、長期PS2あるいはSmo発現抑制細胞をクローン化し長期安定培養株の樹立を試みる。(4)免疫不全マウスに膵がん細胞を移植し、増殖スピードが低下(プラトーに達する)した状態の腫瘍(G0期細胞が豊富)を摘出し、長期生存可能なG0期細胞をクローニング法により樹立する。(5)PS2あるいはSmoのノックダウンによる短期G0/G1期細胞は誘導可能なので、これら短期G0/G1期細胞の細胞周期再侵入にこれら分子が関与しているかを確認する。さらに、(4)で採取されたG0期細胞を用いて、培養条件を変化させ細胞周期再侵入誘導実験を実施する。(6)腫瘍組織におけるG0期細胞の同定と候補遺伝子の発現を我々の開発した半定量的蛍光免疫染色法を用いて実施し、in vivoにおけるG0期細胞への候補遺伝子の関与を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
G0細胞誘導のための細胞周期解析(FACS解析、セルソーター操作など)および遺伝子操作や候補遺伝子検索のための消耗品(siRNA、遺伝子導入、細胞培養、マイクロアレイ解析など)購入が必要となる。また、前年度in vitroの系での細胞株樹立に難渋しており、in vitroの系と並行して、in vivoの系を用いたG0期細胞樹立を試みるので免疫不全マウスの購入が必要となる。さらに、手術時摘出腫瘍組織を用いた半定量的蛍光免疫染色法を行うため抗体等の消耗品購入が必要となる。
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Research Products
(1 results)