2011 Fiscal Year Research-status Report
ERβ陽性トリプルネガテイブ乳癌に対するホルモン療法の探索研究
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23659624
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐治 重衡 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80446567)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エストロゲン受容体 / 乳がん / ホルモン療法 / タモキシフェン |
Research Abstract |
乳がんホルモン療法の適応は通常ERα陽性乳がんだが、ERα評価が一般的ではなかった過去の一時期に閉経後であれば全例ホルモン療法(タモキシフェン; TAM)が術後補助療法として実施されていた。この時代の患者乳がん組織の再評価からERα陰性PR陰性ながらTAM治療のみを実施されたグループが存在していた。この群においてERβ発現の意義を検証したところ、ERβの発現が良好な予後の予測因子となっていた。このため、ERα陰性、PR陰性といった通常はTAM療法の適応のない群に対して、ERβが陽性であればTAM療法を実施する意義を検証する臨床研究を立案した。実施にあたり、連携研究者との協議を行ったところ、確認すべき点としてERβの発現評価が擬陽性など正確ではなかった場合でも、薬剤を投与される患者に少なくとも不利益がないことを確認する必要性が指摘された。このため、タモキシフェンを補助療法として使用していない患者666例に関して、ERβ発現の意義を本年度に検証した。このなかのERα陰性、PR陰性患者群を対象にERβの発現とTAM療法の影響を検討したところ、ERβ陰性でTAMを投与した患者群がTAM未投与群に比較し予後不良となる可能性が示された。これは本来陰性である症例を陽性と判定した場合、患者に不利益を生じる可能性を示唆しており、ERβ発現評価法の品質管理・妥当性を検証することが急務とされた。またTAMの治療効果に影響をあたえる、ERβに親和性の高いアンドロゲン代謝物の血液中濃度の評価を本年度実施した。治療前の閉経後乳がん60例の血清サンプルを使用し、LC MS/MS法により測定した。この結果例えば閉経後乳がん患者における血清中3β-Adiol濃度は平均3.49 pg/ml(95%CI:2.69-4.53)であり、E2とほぼ同濃度の存在が確認された。これに関しても治療前評価を予定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画では、本年度中の探索的臨床試験の開始を予定していたが、前述のごとく、試験へのエントリー基準に相当するERβ発現評価に擬陽性が生じた場合、被験者に不利益が発生する可能性が判明した。患者を対象とする臨床研究にあたっては少数例の探索研究でも、少なくとも患者へ不利益が発生しないことの担保は重要であり、この問題の解決を優先と考え本年度の患者対象臨床試験の開始は見送りとなった。一方、継続的に実施しているrationaleとなる基礎研究の結果から、エストロゲン以外のステロイドホルモン(アンドロゲン代謝物)がERβ陽性乳がんのTAM治療効果に影響を与える可能性が示唆されたため、60例の患者血清を用いた各種ホルモン濃度測定は計画通り本年度実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
患者検体におけるERβ染色評価法の品質管理を担保するため、再度連携研究者と検討し、過去のアーカイブ評価を次のように実施することとした。2つの施設から計10例程度の症例で複数回評価用標本を作製し、染色強度のばらつきや評価の信頼性を検証し報告する。また、本年度に実施したTAM未使用の患者臨床サンプルでの研究から予想外の知見が得られたことから、細胞株を用いた基礎研究としてERα陰性でERβ陰性乳がんにおけるTAMの負の効果に関し、そのメカニズムを検証する。この負の作用(細胞増殖もしくは転移促進の方向にTAMが影響)の可能性については、細胞生物学的には検証されたことはない。一方、2011年にLancet誌に報告されたEBCTCGメタアナリシスでは、過去のリガンド結合法で評価されたERとして0 fmol/mg proteinの患者群にTAMを使用することで有意差はないものの、予後が不良の方向へ影響がでる可能性が報告されており、なんらかの合理的な作用が存在する可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
薬剤購入費などが本年度に発生しなかったため、次年度への繰り越し予算が生じている。・免疫組織学的染色の品質管理に関する研究を前述のごとく実施する(病理医・病理科検査技師との協働のため謝金を新規に予算化する可能性あり)・ERα陰性PR陰性でERβ陽性/ERβ陰性(MDA-MB 231細胞にERβ-siRNAを使用)乳癌細胞株を作成もしくはこれに相当するphenotypeの乳がん細胞株を購入し、TAMの作用の違いについてそのメカニズム解析を背景研究として実施する・平成23年度の知見について、学会報告などを行う。これらに関して研究を実施していく予定としている。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Association of Double-Positive FOXA1 and FOXP1 Immunoreactivities with Favorable Prognosis of Tamoxifen-Treated Breast Cancer Patients2012
Author(s)
Ijichi N, Shigekawa T, Ikeda K, Horie-Inoue K, Shimizu C, Saji S, Aogi K, Tsuda H, Osaki A, Saeki T, Inoue S.
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Journal Title
Hormonal Cancer
Volume: Apr. 3 [Epub ahead of print]
Pages: -
Peer Reviewed
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