2011 Fiscal Year Research-status Report
細菌特異的集積を示す光増感剤を用いた局所多剤耐性菌感染症に対する光学的診断・治療
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23659628
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
守本 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (10449069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (70531391)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光線力学療法 / 多剤耐性菌 / 発光細菌 / マウス / 膝関節炎 |
Research Abstract |
整形外科領域の術後感染はきわめて難治性であり、特にメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)などの多剤耐性菌による感染は長期間の抗生物質投与と侵襲的治療を要し、患者のQOLが著しく低下するため、新たな治療法の開発が望まれている。 我々は、局所の細菌感染症に対する光線力学療法(PDT)のin vivoにおける治療効果発揮に際して重要となる要因の探索を行っている。そこで本年度では第一に、細菌感染症に対するPDTが治療効果を発揮するための光増感剤の特性につき検討した。In vivoにおける局所の細菌感染症に対してPDTが治療効果を発揮するためには、光増感剤が、(1) 長波長域に最大光吸収帯を有する、(2)殺細菌能力を有する、(3)白血球を傷害しない、の3つの条件を全て満たす必要がある。数種類の実験試薬や食品着色料等について検討した結果、これら3つの条件を全て満たしていたのは、メチレンブルー(MB)とトルイジンブルー(TB)の2つであった。そこで次に、長波長に光吸収域を有するMBを用いて、in vivoにおけるPDTの検討を行った。 この検討に先立ち、経時観察が可能で、臨床像にできるだけ近い、難治性の膝関節炎モデルをあらたに確立した。イメージング手法によって細菌数カウントができるようルシフェラーゼ発現発光MRSAを用い、さらに難治性モデルとするためにポリスチレン微粒子を使用し、バイオフィルムを形成する難治性マウス化膿性膝関節炎モデルを作製した。 上記モデルにおいて、MBを用いたPDT (MB-PDT)による治療効果が得られた至適な光照射エネルギーは50-80J/cm2であった。また、MB-PDTは直ちに殺細菌効果を発揮するのではなく、PDT実施後2日目から遷延的な治癒効果を発揮した。 今回の結果からMB-PDTはin vivoにおいて細菌感染症を有効に治療に導き得ることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書提出当初の計画では、光増感剤として5-アミノレブリン酸(5-ALA)使用を予定していた。しかしその後の検討により、5-ALAを用いたPDTでは十分な細菌感染抑制効果が期待できないことが予想されたので、あらためて、細菌感染に対する PDT に適した光増感剤の選定を行った。その結果、メチレンブルー(MB)が検討した範囲においてはもっとも有効性の高い光増感剤であることがわかった。以後H23年度計画で示した通り、発光細菌を用いた感染動物モデルを確立でき、さらにin vivoにおいてMBを使用したPDTの検討も行い、感染動物モデルにおいて高い治療効果がもたらされることを示すことができた。以上の進捗状況を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると思料した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果として、MBを使用したPDTがマウス膝関節感染モデルにおいて高い治療効果がもたらすことが明らかになったので、今後はその効果メカニズムについて追及していく。とくに申請者らはこれまでに、PDTによる細菌感染治療の効果に関して、感染局所への好中球の集積がきわめて重要であることを明らかにしてきたので、PDTによる好中球への影響につき調査を進める。たとえば、PDT実施マウスモデルの膝関節を採取し、病理組織学的検討を行い、PDT前後の関節内好中球の数や動態を分析する。他方、PDT 効果を最大たらしめる、PDT に関する至適パラメーター(MB 投与濃度、MB投与後照射までの時間、など)を明らかにする。以上の検討により、臨床応用可能な治療としての確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の推進に必要なシステム、装置類は研究室内に備えているので、次年度の研究費も初年度同様に、おもに、実験を行うのに必要な試薬・消耗品の購入にあてる。また、マウス(1匹 2,000円)を15匹使用する実験を年間24回程度行う予定で、それらに必要な経費にも充てる。 その他の費用としては、研究に関する打ち合わせを行うための会議費、学会参加費、成果報告のための印刷費、得られた成果を国際一流誌に投稿するための外国語論文の校閲の費用および投稿料などへの支弁も予定している。
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