2011 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いたMDSCへの分化誘導および免疫細胞療法の開発に関する研究
Project/Area Number |
23659629
|
Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
梨井 康 独立行政法人国立成育医療研究センター, ラジオアイソト-プ管理室, 室長 (60321890)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 移植・再生医療 / 幹細胞 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
本研究の目的はiPS細胞からミエロイド由来抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cells; MDSC)への分化誘導ならびに細胞免疫療法の確立である。本年度の研究内容は、1.iPS細胞からより簡易・大量にミエロイド由来細胞作製する方法の確立を行った:今まで確立したES、iPS細胞から樹状細胞を作成する分化誘導技術を基盤として、細胞免疫治療に用いる各種免疫細胞を簡易に大量に作製するための分化誘導方法を検討した。DCへの分化誘導と同様、Step-1で7日間培養し、iPS細胞のコロニーが十分に分化したことを確かめたのち、Step-1の1枚の培養皿をトリプシン処理し、iPS細胞、OP9細胞とも単細胞にし、ゼラチンコートしたStep-1と同サイズの培養皿3枚に等量に播種し、Step-2の培養過程に入り、十分量の分化誘導された浮遊細胞を得ることができることを見出した。2. iPS細胞からMDSCへの分化誘導およびその機能解析を行った:iPS-MDSCの誘導は共同研究者Luらが確立された肝星細胞(hepatic stellate cells、HSC)を用いた骨髄由来MDSC(BM-MDSC)への分化誘導技術を基盤として検討した。その結果、iPS-MDSCでは、BM-MDSC とほぼ同様で、iPS-DC、BM-DCと比較して、Ia、CD11c、CD40分子の発現は顕著に減弱した。ギムザ染色による細胞形態の観察においては、iPS-MDSCとBM-MDSCの差が見られなかった。また、抗原提示能としてT細胞に対する増殖効果がなく、アロ刺激によるCD4、CD8T細胞増殖の抑制機能がiPS-MDSCの用量に比例していた。これらの結果からiPS細胞からMDSCに分化誘導することができたといえる。今後、その機能解析を急性GvHD、心臓移植モデル等用いて引き続き行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、主に細胞免疫治療に用いるMDSC簡易・大量に作製するための方法およびMDSCの分化誘導方法の確立等に重点を置き、これらの方法を確立したことで、今後のIn vivoでの動物モデルを用いて制御性DCの機能の検証には大いに役に立つ。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度で確立したiPS細胞からMDSCの簡易・大量に作製するための方法およびMDSCの分化誘導方法を生かして、これら細胞の免疫抑制機序の解明、動物移植モデルの検証による細胞療法の構築等を通じて、次世代免疫抑制細胞の本質を理解し、安全で安定した免疫抑制状態を誘導するとともに、免疫寛容を成立させる手技を開発していく予定です。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の研究成果を踏まえて、下記の計画で研究を進めて行く予定である。1.In vitroにおけるMDSCの遺伝子、分子発現および機能解析:iPS細胞から分化誘導され調製されたMDSCの免疫制御機能およびその作用機序を制御性DCと比較して解析を行う。さらに、関係遺伝子、その他の表面分子の発現、サイトカイン分泌等の検討をDNA チップ、RT-PCR、ELISA等を用いて検討を行う。2.移植動物モデルにおける免疫細胞療法の検証:マウスを用いた心臓、膵島、皮膚移植または局所および全身GvHD(graft versus host disease)モデルにおけるMDSC、制御性DCの効果を検討するために、分化誘導されたMDSC或は制御性DCを宿主に養子移植する。臓器移植後の免疫寛容誘導、生着延長効果およびGvH反応の抑制効果、免疫組織学的所見を検討すると共に、移植免疫寛容誘導・維持機構の解明を細胞免疫学的解析にて行う。MDSCがもたらす免疫制御の分子作用機構をマイクロアレイ、定量RT-PCRを用いた網羅的な遺伝子発現解析により比較検討する。また、臨床応用を視野に入れ、微量の既存免疫抑制剤との併用による免疫抑制の相乗効果についても検討を行う。3.ヒトiPS細胞を用いて、MDSCへの分化誘導:マウスiPS-MDSCへの分化誘導方法を確立した上、ヒトiPS細胞をお用いて、MDSCへの分化誘導を試み、MDSC関連性細胞表面分子についてFACSを用いて検討を行う。また、in vitroにて混合リンパ球反応等を行い、MDSCの免疫制御機能およびその作用機序をマウスiPS-MDSCと比較して解析を行う。
|