2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23659647
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田浦 康二朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378629)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 水素水 / 活性酸素 / 肝細胞 / 星細胞 |
Research Abstract |
本研究は、近年活性酸素(フリーラジカル)の選択的阻害効果が注目されている水素水を用いて肝線維化抑制効果を検証する事を目的とし研究を開始した。In vivo 実験として、通常の水で飼育したマウス(コントロール群)と水素水を用いて飼育したマウス(水素水群)に肝線維化誘導を行った。肝線維化誘導の方法として肝細胞傷害型の四塩化炭素腹腔内投与、および胆管細胞傷害型の胆管結紮により肝線維化を誘導した。結果、四塩化炭素投与による線維化誘導に対しては有意な肝線維化抑制効果を示したものの、胆管結紮モデルにおいては明らかな差を認めなかった。両モデルの水素水に対する効果の差を肝傷害メカニズムによる効果の差であると考え、他の肝細胞傷害薬剤であるチオアセトアミド腹腔内投与モデルを用い、コントロール群と水素水群で比較を行ったところ、水素水による有意な線維化改善効果を認めた。これまでの結果をもとに考察するに、肝硬変を来す病態は数多くあるが、大きく分類すると上に示したように肝細胞傷害型、胆管細胞傷害型の2種類に分類される。両者とも肝硬変に帰結することが知られており、前者の代表例がC型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎、生活習慣病に関連する肝炎であり、後者の代表例が小児の胆道閉鎖症、原発性胆汁性肝硬変などである。肝硬変は、その肝傷害機転によらず類似した組織像、臨床像を呈するが、傷害のメカニズムにより肝硬変の形成機序は異なるはずである。本研究の結果は肝硬変の形成過程において活性酸素の果たす役割が、両者の間で異なる可能性が考えられる。さらに肝硬変の治療を行うにあたり、その傷害機転により異なった治療法が必要である可能性を示唆する。今後、活性酸素が肝臓内のどの細胞に影響して肝傷害を引き起こしているのか、また水素水がそれをどのように抑制するかを調べることは肝硬変に対する根本治療を模索する上で意義深いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究開始時の研究計画の箇所に記載したとおり、平成23年度中に水素水を用いたin vivoの実験を完了し得た。 予定した四塩化炭素投与モデルにおいては当初予想された結果が得られたが、胆管結紮モデルにおいては水素水による線維化抑制効果を認めなかった。そのため、他の線維化モデルであるチオアセトアミドモデルの実験を追加したものの、平成23年度中にin vivoの実験を完遂することができた。平成24年度には当初の研究計画の通り、細胞レベルにおいて水素水の線維化抑制効果のメカニズムの解明するため、in vitroの実験を開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画の通りin vivoにおける水素水の線維化抑制効果が確認されたため、その機序を解明するべく、肝臓より細胞を分離して細胞培養系において水素水の効果を検討する。まず肝線維化の際の主要な線維産生細胞であると言われている星細胞に対する効果を検討する。星細胞を、密度勾配遠心法を用いてマウス肝臓より分離培養する。培地中に水素水を添加し、星細胞の活性化を観察する。さらに肝を構成する星細胞以外の細胞(肝細胞、クッパー細胞など)への影響も検討する。以上の当初の研究計画概要に変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画のとおり実験を遂行し得ているが、試薬の値引き等により本年度研究予算に若干の余剰(\73)が生じた。次年度の研究費と合算し、必要な物品を購入する。
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Research Products
(4 results)