2011 Fiscal Year Research-status Report
大規模スクリーニングシステムによる肝再生医療を実現化する低分子化合物の同定
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23659650
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
汐田 剛史 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70263457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星川 淑子 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10181489)
神吉 けい太 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10516876)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 肝細胞分化 / スクリーニング |
Research Abstract |
重症の肝疾患の治療には、肝移植の優れた点を継承し、ドナー不足の欠点を補う治療法として、幹細胞を利用した再生医療の開発が期待される。我々は、Wnt/beta-catenin経路抑制性の低分子化合物のうち、ヘキサクロロフェン、ケルセチン、イマチニブがヒト間葉系幹細胞を機能性肝細胞へ分化誘導することを見出している。そこで、本研究は、Wnt/beta-cateninシグナル抑制性低分子化合物を選択する大規模スクリーニングシステムを導入し、肝細胞分化誘導能を持つ低分子化合物を抽出することを目的としている。 スクリーニングは、ヒト間葉系幹細胞にTCFモチーフを3回繰り返しもつルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定導入した細胞を用いた。しかし、これまでのレポーター細胞を用いたルシフェラーゼアッセイ系は、コントロール実験において測定値のばらつきが非常に大きく、大規模スクリーニングには不適であった。そこで、0.1% DMSOを用いたコントロール実験において、測定値のCV10%以下の実験系を構築することが理想的であり、以下の検討を行った。1.酵素活性の高い新規ルシフェラーゼレポーター細胞を樹立した。樹立したレポーター細胞は約48倍の活性を持っていた。2.播種細胞数をウェル当たり2000個に増加させ、酵素活性を高め、ルシフェラーゼ活性のばらつきが減少した。3.マルチドロップを使用し、播種細胞数のばらつきが減少した。4.無血清、ハイドロキシウリア、コルヒチンなどにより、細胞周期を同調させるための諸条件を検討し、細胞集団のWnt/b-cateninシグナルのばらつきを減少させるよう検討した。最終的には無血清による方法を採用した。 以上の検討により、最も初期の従来法のCV105%に比較し、新規のレポーター細胞を用い、マルチドロップを使用し、細胞周期同調を導入することにより、CVが16%まで向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、我々は大規模スクリーニングに適した方法の開発を検討してきた。具体的には、1.マルチドロップにより、細胞数のばらつきを最小限にする。2.高感度のルシフェラーゼ活性をもつ3回繰り返しのTCF4モチーフをもつルシフェラーゼ遺伝子の安定導入したヒト間葉系幹細胞の樹立。3.播種細胞数をウェル当たり2000個に増加させ、酵素活性を高め、ルシフェラーゼ活性のばらつきを減少させる。4.細胞周期の影響を最小限にするための同調培養の導入。5.酵素基質の添加時期の変更。 以上の検討により、マルチドロップを用いず、マルチピペットを用い、活性のより低いルシフェラーゼ活性を持つヒト間葉系幹細胞を用いず、ウェル当たりの細胞数が少数であり、細胞同調を行わなかった従来法のCVは105%であった。これに比較し、新規のレポーター細胞を用い、マルチドロップを使用し、細胞周期同調を導入することにより、CVが16%まで向上した。したがって、スクリーニング法としては、格段の向上を見たが、スクリーニング法の理想とされるCVが10%以下と比較すると、まだ改善の余地がある。 平成23年度は、CVが10%以下の大規模スクリーニングに適した方法を開発することを目標としていたので、CVが16%といえ、まだ目標の数値に達していないことを考慮すると、研究の目的達成度としては、やや遅れている。 Cell-based screening法の限界も想定されるが、CVが105%から16%へ格段の向上を示した点は好材料であり、今後種々の工夫を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
新規に樹立したレポーター細胞について、マルチドロップの使用および細胞周期同調を導入することにより、CVが105%から16%に向上できた。しかし、理想とする測定の精度はCV10%以下であり、今後さらに検討を加える予定である。大規模スクリーニングを再度行いたいと考えている。Cell-based screening法の限界も想定されるが、CVが105%から16%へ格段の向上を示した点は好材料であり、今後種々の工夫を行いたい。 具体的には、平成23年度に行った試みを一つ一つ再検討する。1.マルチドロップにより、播種細胞数のばらつきのばらつきを最小限としたい。。2.高感度のルシフェラーゼ活性をもつ3回繰り返しのTCF4モチーフをもつルシフェラーゼ遺伝子の安定導入したヒト間葉系幹細胞を、平成24年度にも再度作製し、スクリーニング用細胞としての有用性を検討したい。3.高感度で活性のばらつきを最小限とする、ウェル当たり播種細胞数を再検討したい。4.細胞周期の影響についおて再検討を行い、影響を最小限にするための同調培養の導入の更なる検討を行いたい。5.酵素基質の添加時期の再検討を行いたい。 以上の検討により、スクリーニング法として理想とされるCV10%以下となる方法を開発することを目標とする。 さらに、本スクリーニング法により、有効なWnt/beta-cateninシグナル抑制性低分子化合物を選択する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の目的を達するために、以下のように研究費を使用する計画である。(1)優れたCell-based screening法の確立に向けた研究1.マルチドロップにより、細胞数のばらつきを最小限にする試みを再度行う。2.高感度のルシフェラーゼ活性をもつ3回繰り返しのTCF4モチーフをもつルシフェラーゼ遺伝子の安定導入したヒト間葉系幹細胞を、再度樹立するための試みを行う。このため、再度、ヒト間葉系幹細胞への安定遺伝子導入を試み、多数個のクローンを樹立し、その中から高活性のルシフェラーゼ活性をもつ細胞クローンを選択する。遺伝子導入効率を上昇させるため、種々の遺伝子導入法を検討する。3.ウェル当たりの播種細胞数を再検討する試みを行う。4.細胞周期の影響を再検討し、この影響を最小限にするための同調培養を再検討し、本スクリーニング法へ導入する。5.酵素基質の添加時期により、安定した活性を得るための条件を再検討する。以上の検討により、優れたCell-based screening法の開発を行い、スクリーニング法として理想とされるCV10%以下を目標とする。(2)ヒト間葉系幹細胞を肝細胞へ分化誘導する方法の確立 さらに、本スクリーニング法により、有効なWnt/beta-cateninシグナル抑制性低分子化合物を選択する。得られた化合物により、ヒト間葉系幹細胞を肝細胞へ分化させ、移植医療に用いることが可能な、安定・安全な方法を確立することを目標とする。 239,375円の次年度使用額が生じたのは、上述した研究が本年度終了時に重なったため、次年度の研究費として繰り越すことになったためである。
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