2011 Fiscal Year Research-status Report
グリオーマ幹細胞特異的分子群の超微量解析システムの構築
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23659693
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
荒木 令江 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (80253722)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | グリオーマ幹細胞 / プロテオ-ム / トランスクリプトーム / 融合プロテオミクス |
Research Abstract |
悪性グリオーマの悪性化と再発要因と考えられるグリオーマ幹細胞特有の標的分子群、および化学療法耐性の分子メカニズムの一端を明らかにするため、悪性グリオーマ患者腫瘍組織から微量に分離される腫瘍細胞様幹細胞 (GSC)に焦点をあて、プロテオミクス融合解析技術を超高感度に最適化した一連の解析方法論を確立することを目標としている。グリオブラストーマ患者組織より分離したGSC 11クローン中、特にマウス頭蓋内移植にて悪性グリーマを早期に発症する3クローンを樹立した。血清による分化誘導によって変動する分子群の融合プロテオミクスによる解析法 (プロテオーム: iTRAQ (nanoLC-MS/MS)/2D-DIGE 法/トランスクリプトーム:DNAアレイ法の融合解析システム) を開発し、GSCにおける発現変動分子群の定量的解析を行った。同定された分子群(8,471タンパク質、21,857 mRNA)を独自に開発したiPEACHソフトウェアによって統合し、GSCの分化誘導における発現変動分子群(上昇662個、減少326個)のGO解析を行った。分化誘導時の発現亢進分子群として、細胞外マトリクス群および細胞接着関連分子群、発現抑制分子として細胞周期促進因子群等を同定し、生物学的検証実験に供した。またGSCは、幹細胞マーカーCD133、Sox2の発現と、血清添加による分化誘導時のこれらの減少、及びAstrocyteマーカーGFAP、NeuronマーカーTuj1、悪性グリオーママーカーCD44の発現を誘導し、神経幹細胞様の性質とグリオーマ細胞への分化能を有することを明らかにした。また、これらの分子群を独自に開発した全自動2次元電気泳動排出転写装置を応用することによって、複数個のマーカー分子の同時検出法を検討し、翻訳後修飾を含めたマーカー分子群の動的発現変化を短時間でとらえる事が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の本研究は、1, glioblatoma患者組織サンプルからのGSC単離と特殊培養条件下での長期培養法確立,においては、GBM 11例より9クローンのGSC様細胞の分離に成功した。これらを用いて2, 樹立した細胞が脳腫瘍癌幹細胞由来であることを癌幹細胞評価法により解析、脳腫瘍癌幹細胞マーカー:自己複製能: sphere formation アッセイ:癌細胞分化能: 血清存在下での癌細胞への分化誘導:癌細胞形成能: マウスへの脳腫瘍癌幹細胞移植実験、3, 分離した癌幹細胞サンプル,及び組織細胞を用いた融合プロテオミクス・トランスクリプトームDifferential Display(2D-DIGE法,iTRAQ法,DNAchip)による分子解析, データベースの構築に関して、研究計画に沿って順調に終了した。さらに同定分子の機能解析を行い、マーカーとしての可能性のみならずこれらの同定分子が脳腫瘍における新規治療薬ターゲットになり得るかについても検討しており、この成果をまとめた論文が投稿中であることから、当初の計画に沿って順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、1. すべての方法論から得られたデータマイニング,特異的活性化・不活性化シグナルネットワークの抽出、シグナルネットワーク解析ソフト(Keymolnet)によるデータの解析,最も癌幹細胞中で活性化している分子群ネットワークの抽出,化学治療感受性・非感受性の中で最も差異のあるシグナル分子群のクラスター解析・シグナル分子群の相互ネットワーク解析・抽出2. 抽出された分子群のValidation:Brain natural 2Dchipと, 抽出された分子群の抗体カクテルを用いて2D-Western Blot Mapping法(迅速解析法の確立はできている)による確認,腫瘍組織・血液・髄液内マーカーとしての可能性の検討,及び免疫組織化学的な解析との比較,情報のデータベース化 3. 検出蛋白質群の細胞内機能解析と治療ターゲットとしての可能性の検討:Glioma培養細胞を用いたターゲット遺伝子ノックダウン(SiRNAによる)の検討,抗がん剤による細胞機能変化の解析・タイムラプス共焦点顕微鏡による観察。細胞内で遺伝子欠失或いは,発現抑制に付随して変化する脳組織/細胞内分子群の動態の解析4. 成果の論文発表 を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
質量分析および2次元電気泳動用試薬類、DNAチップキット類、動物、抗体類、培地用試薬,血清類、プラスチック器具, 解析用ソフトウエア、データベース開発のためのコンピュータとその周辺機器等の消耗品類、および、論文投稿費に全額使用予定である。
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