2011 Fiscal Year Research-status Report
軟骨細胞のメカノシグナル解明へのin vitro肥大化・変性モデルの樹立と応用
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23659705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
筑田 博隆 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (30345219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 全宏 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40361498)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 変形性関節症 |
Research Abstract |
変形性関節症などの運動器変性疾患は高齢者の生活の質を低下させるロコモティブシンドロームの中心的な疾患であり、関節軟骨の変性予防や、修復・再生といった本質的な治療技術は社会的要請となっている。我々は軟骨内骨化の後期にみられる軟骨細胞の肥大分化に類似した現象が変形性関節症においてもみられること、また肥大分化促進分子を抑制することによって変形性関節症の発症・進展を抑えられることを証明した。しかしながら、その主因である過剰なメカニカルストレスが関節軟骨の肥大分化・変性をどのように誘導するかはいまだに不明である。動物モデルでは最新の分子生物学的解析法が応用できないため、さらなる研究にはin vitroのモデルの開発が必要不可欠となっている。我々は軟骨細胞に静水圧を負荷する系を用いることによって、変形性膝関節症患者で実際に起きている軟骨変性を擬似できるような過剰静水圧負荷による軟骨変性のin vitro実験系を確立すべく、本研究を計画した。現在までのところ、過剰な静水圧を負荷することによって、軟骨肥大分化マーカーの発現上昇をモデル化することができた。現在は軟骨細胞株、初代軟骨細胞を用いた基礎実験中であるが、今後このモデルをヒト軟骨細胞に最適化する条件を見つけることができれば、そこから変形性関節症の発生・進行メカニズムを詳細に解明し、予防・治療に向けての戦略を打ち立てることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1マウス由来未分化軟骨系・間葉系細胞株(ATDC5, C3H10T1/2)、ヒト由来軟骨系細胞株(OUMS-27, SW1353)およびマウスの初代肋軟骨細胞、関節軟骨細胞を用いて静水圧負荷を行い、圧負荷後に細胞を回収し肥大分化マーカーの発現解析を行った。細胞種によって性質が異なるため、負荷圧、負荷時間、その後の培養期間などのパラメーターの条件検討を行った。その結果、ATDC5、マウス初代関節軟骨細胞においては、過剰圧不可によりMMP13やVEGFAといった肥大分化マーカーの発現量が増加することが判明した。現在は細胞回収後の肥大分化マーカーの発現レベルの解析を行っており、実験系の最適化を目指して条件検討を継続している。また、我々はマウス変形性関節症モデルを用いて、肥大分化マーカーの発現パターンを時間的・空間的に検証しており、この発現パターンとin vitroの肥大分化誘導系モデルでの肥大分化マーカー発現パターンの適合性について検討している。圧負荷時の細胞の分化程度や細胞の種類を適切に選択することによってこの多様性をin vitroで詳細に再現することができれば、変形性関節症の分子メカニズムの多くが解明されうると期待される。我々は圧負荷の条件検討の中で、多様な肥大分化のパターンを獲得することも同時に目指しており、さらに詳細にmRNA 、タンパクレベルでの検討も追加してin vivoでの現象との適合性を様々な角度から検証する。これまでのところ、上記のように初年度の実験はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
適度な静水圧を負荷すると軟骨細胞の特性が保持され、さらに過度の圧を負荷すると肥大分化・変性が生じるという現象がどのような細胞内変化を介しているのかを探索すべく、それぞれの圧負荷前後のサンプルを用いて、ChIPシークエンスを用いたエピゲノム情報の解析、マイクロアレイによるcDNA、mRNA、microRNAの解析、プロテインアレイによる蛋白レベルの解析などを行う。さらに同様のスクリーニングを同一細胞の成長板軟骨細胞の肥大分化系でも行い、骨格形成時の生理的な軟骨内骨化・肥大分化と変形性関節症の発症・進展時の病的な軟骨内骨化・肥大分化との間の共通点、相違点を包括的に解析する。これらのスクリーニングによって、多数の新規遺伝子が変形性関節症の原因候補遺伝子として挙がるものと予想される。これらすべてに関して遺伝子改変マウスを作成することは不可能であるが、細胞レベルであれば容易に行えることから、cDNAあるいはsiRNA/microRNAを組み込んだレトロウイルス・レンチウイルスベクターを作成して候補分子の過剰発現細胞・発現抑制細胞を作出し、圧負荷実験を介してその機能解析を行う。圧耐性に強い影響を有する遺伝子が同定されれば、遺伝子改変マウスの作成などさらなる解析へと繋げていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度と同様に実験試薬等への使用と、研究計画書に記載した通り、今年度はマイクロアレイなどのより高度な遺伝子解析が必要となるため、そちらに対して使用する予定である。
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