2011 Fiscal Year Research-status Report
発達期の脳と麻酔薬:脳の臨界期を介する神経毒性機序に関する新規統合的アプローチ
Project/Area Number |
23659736
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西川 光一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00334110)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | グルタミン酸 / GABA / 麻酔薬 / 抑制シナプス / 学習 / 記憶 / パッチクランプ |
Research Abstract |
脳の臨界期とは、神経機能発達の過程で外界刺激に特に敏感な時期と考えられる。臨界期の例として、生後28-32日齢マウス視覚野の再構築が知られる。生後28日前後に訪れる視覚野の臨界期は、一生に一度だけであり、この時期を決定しているのはGABA抑制系の強さである。これが増強されると臨界期は早期に移動し、逆にGABA系が減弱した状態が継続すると、臨界期は遅れるか、あるいはピークを迎えない場合もある。実際にベンゾジアゼピンは臨界期の大きな影響があることが示されている(Fagiolini and Hensch, Nature 2000; Katagiri et al. Neuron 2007)。では、臨床麻酔使用されるプロポフォールやセボフルランの使用では脳の臨界期は移動するのかどうか、まず第一段階として、GABAニューロンにGFPを導入したマウス(生後1週間)にセボフルランを6時間投与し、4ヵ月後のGABAニューロンの機能、学習・記憶能力への影響を調べた。セボフルランを投与されたマウスでの行動解析から、空間認知能力への影響は極めて少ないが、非学習系不安検査でやや不安度の増強が観察された。再度の麻酔(セボフルランとプロポフォール)への感受性の変化はなかったことから、グルタミン酸やGABAなど主要な神経伝達物質のバランスにも大きな変化を及ぼさなかったことが示唆される。今後は、GABAニューロンの変化を脳スライス標本を使って電気生理学的に解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた、新生マウスにセボフルラン投与の実験は計画とおり進行しているので、ほぼ順調である。今後は、セボフルラン投与後の神経細胞の機能変化に関して、シナプスレベルでの解析を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は次の電気生理学実験を計画している。海馬および脊髄におけるGABA電流の解析: スライス標本を作製する(方法は Nishikawa & MacIver, J Neuroscience 2000による)。赤外線顕微鏡下に直接細胞の形態を観察しながら、CA1領域の錐体細胞からホールセルパッチを行う。臨界期に麻酔(プロポフォール、セボフルラン)を行ったマウスの4ヶ月成長後、シナプス可塑性の変化と記憶に関する行動実験との関連を精査する。また、臨界期の麻酔後の持続電流(tonic inhibition)変化に関して、GABA-tonic inhibitionを測定し、行動解析における不安はGABA系の変化と関連するかを解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電気生理(パッチクランプ)のセットアップのために、麻酔薬をバブリングしながら投与できるチャンバー、また麻酔濃度モニター、さらにマウスを麻酔できる密閉さらた麻酔箱などの購入が必要である。
|
Research Products
(4 results)