2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞傷害の原因となる一重項酸素を細胞内外で特異的に消去する薬剤の開発
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23659740
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒井 俊之 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80175950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 浩平 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80402858)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 一重項酸素 / 特異的消去剤 / プテリン化合物 / エダラボン / アジ化ナトリウム / ラマン分光法 / ヒト好中球 / スーパーオキシド |
Research Abstract |
1. 新たな薬剤の合成についてa) 合成用原料のプテリン、ジメチルホルムアミド(DMF)ならびに塩化ピバロイルを反応用フラスコに入れて撹拌し、12時間おきに反応溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析し、反応物の生成をモニターする。b) 得られた生成物は混合物であるのでクロロホルム-メタノール溶媒に溶かし、シリカゲルカラムを用いて分離精製を行う。c) 溶媒をエバポレーターで除去し、質量分析機能付き液体クロマトグラフィー(LC-MS)を用いて物質の同定と純度の測定を行い、仮称ジメチルプテリン(DP)と命名した単一生成物の粉末を得る。d) このDPとエダラボンを反応用フラスコに入れてリン酸バッファー溶液(PBS)中で反応させ、反応物をHPLCを用いて分取し、さらにLC-MSを用いて物質の同定と純度の測定を行い、仮称ジメチルプテリン(DPH)と命名した単一最終反応物を得る。ここまでは成功したが、次の、e) 得られた最終反応物の化学構造を質量分析法や核磁気共鳴法を用いて決定する。が予想以上に困難であったため、成功していない。2. 試薬系における新たに合成した薬剤の一重項酸素消去能の評価については、ラマン分光法を用いた測定を行い、新たに合成した薬剤は、エダラボンやアジ化ナトリウムに匹敵する一重項酸素消去能を有することが分かった。3. 細胞系における新たに合成した薬剤の一重項酸素消去能の評価については、ヒト好中球が産生する活性酸素に及ぼす新たに合成した薬剤の効果を検討し、この薬剤は、エダラボンと同様に、一重項酸素消去能を示すのみならず、エダラボンが有さないスーパーオキシド消去能をも有することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな薬剤の合成については、とこかくもDPHと命名した単一最終反応物を得たわけであり、さらにはその効果を試薬系ではラマン分光法を用いて、ならびにヒト好中球という細胞系では化学発光法を用いて検討したわけであるから、研究計画自体はおおむね順調に進展している。達成出来なかったことは、得られた最終反応物の化学構造を質量分析法(LC-MS)や核磁気共鳴法(NMR)を用いて決定するという点である。これは得られたた化合物の構造が複雑なため、LC-MSでは構造決定に必要な情報が十分に得られず、またこの化合物が水素分子を多く含むため、我々が用いた通常の水素検出NMRではこれまた構造決定に必要な情報が十分に得られなかったためと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、得られた最終反応物の化学構造を質量分析法(LC-MS)や核磁気共鳴法(NMR)を用いて決定することができなかった。これは、前述のように、得られた化合物が水素分子を多く含むため通常の水素検出NMRでは構造決定が困難なためと考えられた。そこで次年度では炭素検出NMRや、場合によっては通常は用いられない方法ではあるが、窒素検出NMRや酸素検出NMRを用いて構造決定を試みることも考えている。なお、ラット大脳皮質神経細胞を用いた神経細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討や、ヒト角化細胞を用いた皮膚細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討は予定通り行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
窒素検出NMRや酸素検出NMRを用いて得られた最終反応物の化学構造の決定を試みる場合は、内部標準物質として窒素-15や酸素-17などの安定同位元素を用いる必要がある。これらの安定同位元素は非常に高価なので、その購入にかなりの費用を要する。また、窒素検出NMRや酸素検出NMRを実施しない場合でも、予定通り行うラット大脳皮質神経細胞を用いた神経細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討や、ヒト角化細胞を用いた皮膚細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討には、ラット大脳皮質神経細胞やヒト角化細胞を購入して用いる必要がある。これらの細胞は正常細胞なので、細胞株と異なり、継代により大量に増殖させて用いるということが出来ない。そのため実験毎に新たに購入して用いる必要があり、その購入に多くの費用を要する。
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Research Products
(2 results)